喉をのぞいてトングや箸などで引っ張り出せることも

6:直接取る
写真=筆者
筆者の筒井冨美氏がこの記事のために、長男が喉にものを詰まらせたという想定で、箸とスプーンを使用して異物除去のシミュレーションをしているところ。

例えば、しゃぶしゃぶ肉などは、喉をのぞいてトングや箸などで引っ張り出すと、あっさり取れることがある。患者を仰向けにした時、高めの枕を入れると喉の奥が見えやすい。舌が邪魔ならば、大きなスプーンを用いて(右利きの場合)左手で左上方に圧排して、右手で箸やトングを持って操作する(写真参照)。喉の奥がよく見えない場合には、助手役の人にスマホのバッテリーライトなどで照らしてもらうと見やすくなる。

掃除機と同様に、1~2分試しても手におえないようならば深追いせず、速やかに呼吸確保に戻るべきである。

7:心臓マッサージ(胸骨圧迫法)

「1」~「6」を試しても窒息が解除されず、患者の顔色は悪く、意識も遠のいてきた。こんな場合は心臓マッサージである。

胸骨(両乳首の中間あたり)を1分間に100~120回、力いっぱい圧迫するのだ。まれにマッサージで肋骨が折れることもあるが、窒息死よりはマシなので、思い切って体重を載せて圧迫すべきである。5分もやればグッタリくるので、複数名での交代が望ましい。胸骨を圧迫すれば肺も動くので、心臓マッサージ単独でも多少の酸素取り込みが期待できる。

心臓マッサージに余裕があれば、「心臓マッサージ30回→人口呼吸2回→心臓マッサージ……」と、心臓30回ごとに人口呼吸を2回挟む方法が、一般的には推奨されている。

しかし「マウス・トゥ・マウス」の人口呼吸に自信がなければ、救急車の到着まで心臓マッサージを続ければ、一般人の応急処置としては合格である。

なお、最近では掃除機に接続できる専用の吸引フラットノズルといった、喉に食物・異物が詰まって取れない時の応急処置として利用するための「専用商品」も販売されている。

本当に役立つかどうかは自己責任だが、高齢者のいる家庭では保険として1本買っておくのも悪くない。アテにはしないほうがいいだろう。

また、誤嚥対策の王道は応急処置よりも「高齢者の食材は小さく切る」 「寝転がって物を食べない」 「早食い・大食いなど食物で遊ぶのは厳禁」などの予防が重要である。子供達へもマナーのみならず、安全という意味でも食育を心がけたい。

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