新型インフルエンザワクチンが次々と開発されている

こうしたインフルエンザウイルスに対抗する最も有効な手段はワクチン接種でしょう。その他の手段として流行地の学校閉鎖が、交通制限よりも流行を遅らせるために有効と考えられますが、効果はワクチンほどではないようです(義澤宣明、私信)。

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念のために書きますが、季節性インフルエンザワクチンは、新型H5N1インフルエンザには予防効果ゼロのはずです。

H5N1インフルエンザの悲劇を避けるために、わが国を含む世界各国で、新しい手法を駆使したワクチン開発も進められています。多くのものが臨床試験の段階ですが、予防効果が期待できそうな新型インフルエンザワクチンが次々と開発されつつあります。

特に、予防効果を格段に上げる新しいアジュバントが開発されてきたことは朗報です。また、わが国では、インフルエンザワクチンは孵化鶏卵を使って製造していますが、培養細胞を使って増やす方法や、HA蛋白などを組み込んだバキュロウイルスを昆虫細胞に感染・増殖させる方法も開発されています。

こうした手段を使うと、短時間のうちに大量のワクチン原料が得られるために、パンデミック時には有用なワクチン製造法になるのではないかと期待されます。新手法を駆使したH5N1ワクチンの中でも、欧米ですでに承認が取られたものもあり、H5N1インフルエンザが流行しそうな緊急事態が生ずれば、即座に使用されるでしょう。

ワクチンの予防効果を間接的に測定する方法には、いろいろなものがあります。また、ワクチンの種類によって、試験法や判定基準が異なります。その中でよく使われる方法の一つに、ワクチン接種によって、どれだけのヒトが特異抗体を持つようになったかを調べる方法があります。

インフルエンザワクチンの場合は、ワクチン接種を受けた7割以上のヒトがインフルエンザウイルスに対する抗体を保有していれば、効果が期待できるとされています。新型高病原性H5N1インフルエンザのような恐ろしい病気では、ワクチン接種者にH5N1ウイルスを感染させて直接ワクチンの予防効果を調べるような人体実験はできません。

H5N1インフルエンザは恐ろしいが、むやみに恐れる必要はない

ただし、動物実験を含むいろいろな実験から、ワクチン接種による抗体保有率の上昇と感染予防効果との間には、H5N1ワクチンの場合でも強い関連性があると考えられています。わが国で開発されたH5N1ワクチンは、ワクチン接種者の抗体保有率の上昇や、実験動物を使った感染予防実験などから、予防効果が期待できる成績が得られています。

H5N1インフルエンザは恐ろしい病気ですが、むやみに恐れる必要はありません。若者の一部には、抗菌グッズの使用に期待を寄せる向きがありますが、健康な若者が抗菌グッズに、このような期待を寄せることは、全く有害無益です。