日韓問題をはじめ、諸外国をめぐるさまざまな国際課題を正確に把握するにはどうすればいいか。政策工房会長の髙橋洋一氏は「外交問題は“わかったつもり”でいるから感情論が生まれやすい。『川を上り、海を渡る』思考が必要だ」と指摘する――。

※本稿は、髙橋洋一『外交戦』(あさ出版)の一部を再編集したものです。

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「庶民にはわからないこと」で片付けてはいけない

「国際関係とは何か」と問われたら、読者は何と答えるだろうか。

ひと言でいえば、国際関係とは国家間の「貿易」と「安全保障」のことである。

貿易と安全保障は表裏一体であり、それを国家間でどうしていくのかを話し合うのが「外交」だ。

「貿易と安全保障の原理原則」をまとめたうえで、このところ目立った動きを見せている国際関係を解説したものが、本書『外交戦』である。

私は、書名の類はすべて編集担当者に一任している。それにしても、なんだか禍々しい響きすらある書名となったものだが、ある意味では、「外交」というものの性質を端的に表している。

外交は、実弾の飛び交わない戦だ。昨今の国際関係に目を向けてみても、各国が貿易と安全保障をめぐってしのぎを削っている。

片方が何か手を打てば、もう片方が別の手を打つ。お互いに国益がかかっているから簡単には引かないし、片方が少しでもスキや弱みを見せたら、もう片方はさらに畳み掛ける。

「相手が引いたら押す」「自分が引いたら押される」――。ひとたび互いの国益が衝突しようものなら、こうした押し合いが起こるのが外交なのだ。

もちろん現代では、実弾が飛び交う戦はそうそう起こらない。少なくとも民主主義国同士では、戦争を極力回避するという力学が働いている。それでも、どうしたら貿易と安全保障を最大限、自国に有利に持っていけるだろうかと戦略を練り、つねに出方を伺っている。

そういう意味では「平時」などじつは存在せず、随時随所で、外交という「戦」が繰り広げられているといってもいいだろう。