経済も国際関係もデータさえあれば読み解ける

世界は今、これまでにないほど激動の時代をむかえている。

国の行方を決める政府に対して、あるいは無知蒙昧なマスコミに惑わされないために、私たちが持ちうるもっとも心がけたいことは、「本質を見抜き、筋の通った答えを導く思考力」だ。

その「考えるという習慣」を手にするためには、一にも二にも原理原則を知ることが何より大事である。この一冊ですべての外交問題を網羅するのは難しいし、そもそも本書の目的ではない。本書に登場した外交問題以外でも、本書で説明したことを応用すれば、自分で筋の通った答えを導き出すことができるはずだ。

私の専門は「数量政策学」だ。数量政策学とは数字、つまり「データ」を通して経済など世の中のことを分析し、政策論を展開するものだ。経済を論じることもあれば、国際関係を論じることもある。

世の中の事象にはたいていデータがあり、データさえあれば、感情や先入観にとらわれず、冷静に分析できるのだ。つまり、私にとっては、経済だろうが国際関係だろうが、考える際の基本スタンスはまったく変わらない。

しかし世間一般では、ちょっと違うようである。

「わかったつもり」が感情論を生み出している

経済については一般的に「よくわからない」という反応が多い。一方、国際関係については、「理解したつもり」で、そのじつ何も理解しておらず、その頭でヒステリックに考えている人が多いように見受けられるのだ。

髙橋洋一『外交戦』(あさ出版)

国際関係とは、国と国とのお付き合いの話である。貿易と安全保障はドライに考えることが重要なのだが、お付き合いという点で「仲がいい」「仲が悪い」「好き」「嫌い」というように個人の感情に落とし込まれやすい一面がある。

経済のように「よくわからない」と投げ出すのも危険だが、外交については「わかったつもり」で間違った考えに陥るのは、さらに危険だ。

貧しい知識からくる狭い視野が、ロジックに乏しい感情論を生み出していることに、早く気づいてほしいものである。

原理原則にのっとり、答えに至るまでのちょっとした思考法を身につけること。難しそうな問題も、原理原則にのっとってシンプルに考えれば、意外とすんなりと筋の通った答えに行き着くことができる。

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