任期内に安倍首相による憲法改正は極めて難しい

現実問題として2021年9月末までの自民党総裁の任期内に安倍首相が憲法改正を実現することは極めて難しい。安倍首相は7月の参院選で憲法改正の議論の是非を争点に掲げて勝利したことを前提に、臨時国会で野党を巻き込んだ改憲論議を進めたいともくろんでいた。

臨時国会では衆院憲法審査会が自由討議を3回行った。しかしこの審査会に付託されている国民投票法改正案は審議されず、結局、5国会連続での継続審議が決まった。首相は12月9日の記者会見で「国民の皆さまの声は、『(改正論議を)もっとしっかり前に進める』というものではなかったかなと思う」と話し、その表情には悔しさがにじみ出ていた。

得意の外交で、内閣支持率を回復させたいが…

安倍首相は今後、得意と言われる外交で自身の存在感をさらにアピールして、内閣支持率を回復させ、来年1月召集の通常国会で、改憲論議を加速させていくつもりだ。

実際、安倍首相は9日の記者会見では「12月中にイランのロハニ大統領の来日を調整している」と語り、「米国と同盟関係があり、同時にイランと長年、良好な関係を維持してきた日本ならではのかじ取りが、国際社会からも求められている」と説明した。

安倍首相は12月15~17日にはインドを訪問してモディ首相とも会談する。12月下旬には中国での日中韓首脳会談に出席し、中国の習近平(シー・チーピン)国家主席や韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領とそれぞれ首脳会談を行う。

習氏との首脳会談では香港の民主化運動を中国との外交にいかに利用できるか。アメリカは香港の運動を支援する香港人権民主化法を成立させ、中国に圧力をかけてる。文氏との首脳会談では、日本に有利な徴用工問題解決の糸口を見つけられるかどうかである。

いずれにせよ、安倍首相の外交手腕が試されることは間違いない。