痴漢ブームは、痴漢冤罪に怯える男性たちの存在が可視化されたことによって終焉した。性被害者の視点からでもなければ、女性の声を聞いてでもない。痴漢ブームと同時期に厳しくなった痴漢取り締まりによっても、これほどまでには変わらなかった。
男性が痴漢冤罪「被害」に遭うことによって、男性が被害男性に配慮した結果、女性への性暴力を娯楽として取り上げた記事が激減したのだ。痴漢冤罪被害に遭うのは女性のせいだとする言説にのみ込まれてしまっている人たちは、「男性が」痴漢文化を作ってきたことを直視すべきだ。
男性たちは誰から身を守るべきか
「プレジデントオンライン」も例外ではない。2019年4月4日に「痴漢冤罪“嘘つき女性”から身を守る方法」という記事が掲載された。
ここでも、女性から痴漢だと言われたら逮捕されるという誤った認識に基づいて筆が進められている。冤罪事件が問題になった2000年前後の事例分析の話が出ているが、インタビューに応じた弁護士が「正しく」指摘しているように、2000年前後に痴漢事件の問題は多かった。
現在は検挙方針が少なくとも2回変わっており、この頃とは大きく事情が違っている。しかし、書き手はそのことには全く触れず、あたかも今も同じような捜査や司法判断が下されていると書く。過去だけでなく、現在の状況も見ようとしない。
メディアが作った物語に騙されているのは誰なのだろう? 男性たちが身を守るべきは、でっち上げられた「嘘つき女性」ではないことに気づくべきだろう。