最後の蓮の花のオチで、お客さんはどっと笑います。いきなり「あんたたちは蓮の花ですわ」と言っても、ただ失礼なだけで、面白くもなんともない。ユーモアでくさびを挟むから、相手も納得して笑ってくれるんですね。
売らない、売りつけない、売り急がない
狙いは失礼と笑いのギリギリのところ。はずしたら相手を怒らせる可能性も高いぶん、利益率も高い。相手が笑わなくてもひるんではいけません。機関銃のようにダーッと話し続ければ、どこかで相手はふっと笑います。
相手を褒めるのもいいですよ。
取引先を訪問する際は、本人がわざわざ飾っているものがヒントになりますね。山の写真があるなら登山好きかもしれない、動物のツノが飾ってあれば「何のツノですか?」と聞くだけでもいい。いずれにしても、商談で最初から売りにいったらアカン。私はね「売らない、売りつけない、売り急がない」をモットーにしてるんです。
それから、おもてなしの心を表す、「施す」という言葉がありますね。これはね「程を越す」ともいうんです。何かと言うと、相手の期待の程を越す、ということ。例えばね、京都のツアーで料亭体験を組んでいたけれど、芸妓さんが体調不良でお休みになってしまったんですね。これではお客様ががっかりしてしまう。だから、私が芸妓になったんです。化粧も着付けもしてもらって、「冷奴ですー」と言ってお座敷に出れば、お客様は笑ってくれますよ。これが「施す」ということ。期待を上回った分だけ、お客様はまた私のツアーに来たくなる。喜んでもらってなんぼですわ。
(構成=吉田彩乃 撮影=福森クニヒロ)