最近、アリババ会長ジャック・マーと米テスラCEOイーロン・マスクの対談動画を見ました。冒頭、ジャック・マーは「AIはアーティフィカル・インテリジェンスではなく、アリババ・インテリジェンス」とジョークを飛ばします。これは『TED』のスタイルです。それをイーロン・マスクは受け流すと、すぐにAI研究者の問題点について語り始めます。このように、演出や構成もなく、いきなり実質的な話題に入るのがポスト『TED』であり、いまはそのほうが人を引きつけると思います。
もう1人あげるなら、グレタ・トゥーンベリ
その気質を持った人をもう1人あげるなら、グレタ・トゥーンベリですね。彼女は国連でもダボス会議でも、原稿を読みながらスピーチしていました。原稿を読むなんて、『TED』では考えられないことです。でも、実質的なことだけを飾らずに話すから、ヘタに演出するよりずっと説得力があります。
別の言い方をすれば、自分の中に熱狂や情熱があるかどうかです。情熱という感情は、偽ることができないといわれています。言葉や口調を飾ったところで、心からの主張であるかどうかは聴衆に見抜かれます。これは普段の会話も同じ。自分が夢中になっていること、心から納得していることを語る。それが相手の心を動かすのです。
(構成=村上 敬 撮影=大崎えりや)