小中学校の講演に呼ばれた際、僕が楽しみにしているのが、流行っている深夜アニメやライトノベルについて教えてもらうことです。大人たちが知らない話がたくさんあります。
知らない話で楽しくなるのは、脳には不確実性に対応できるキャパシティがあり、不確実性を喜ぶ性質を持っているからです。ただし不確実性ばかりでも不安や恐怖でストレスを感じるようになって、脳の活動は低下します。
既知の情報を話すのも悪いことではありません。たとえば、会ったときに「今日はいい天気ですね」「ラグビーの日本代表、頑張りましたね」とお互いによく知っている情報から入るのは、確実性が安定や安心をもたらしてくれるからです。しかし、確実性ばかりだと変化や刺激に乏しく、脳は成長しません。つまり脳の機能のためには、確実性と不確実性の両方が大切なのです。
ただし僕たちは普段、同じクラスター内で確実性の高い話ばかりする傾向があります。バランスを取るには、意識的に異なるクラスターの人と話して不確実性に出合ったほうがいい。
そこでおすすめしたいのが、仲間の少ない集まりに赴いて、「他流試合」に挑むことです。アウェーの会話を怖がる必要はありません。脳は状況に応じて何かのフリをすることができます。たとえば、もともとの自分がAなら、相手との関係性に応じてAダッシュ、また別の相手との会話ではAプライムというように、インターフェースを変えるのです。別人を演じるわけではなく、新しい自分が生み出されているイメージです。異なるクラスターと他流試合をすれば、新しい自分が生まれてくる確率は高い。それをお土産として持ち帰って自分のレパートリーの中に加えると考えれば、アウェーでの会話も楽しみになるのではないでしょうか。
アウェーでの会話は、アンチエイジングにもつながります。新しい状況、新しい自分に出合うと、ドーパミン系が活動しやすくなります。その結果、神経細胞の結合が強化されて強化学習が起こり、神経細胞全体のネットワークが強靭化していきます。逆にホームでの会話に終始していると、新奇性の刺激がなくて加齢が進みます。脳をイキイキとメンテナンスしたいなら、普段接触のない人との会話を楽しんだほうがいいでしょう。
堀江貴文、落合陽一、西野亮廣の共通点
会話で相手をイラつかせてしまう人は、知らない間にマウンティングしているのかもしれません。学歴、職位、年齢、収入……。これらについて自分が上だという意識があると、会話にそれがにじみ出ます。下に見られたほうは反発して、自発的に情報交換しようとは思えないでしょう。