赤字続きの「落ちこぼれ集団」だった武蔵野を、社長として立て直した小山昇氏のもとには、いまもコンサルティングを希望する中小企業が列をなしている。中小企業を潰さないためにはなにが重要なのか。近著『会社を絶対に潰さない社長の「金言」100』(プレジデント社)より、そのノウハウをご紹介しよう。第3回は「部下の育て方」について——。(第3回/全3回)
金言68:「でたらめでいい」とハードルを下げろ
仕事のレベルより、体験に意味がある
新しいことや、難しく思えることを「やれ」と言われると、多くの人は、失敗が怖くて、物怖じしてしまいます。でも、それでは仕事は進まないし、その人の成長も止めてしまいます。そんなときは、ハードルを下げて、やる気が出るようにしてあげます。
私は、入社2年目の湯澤百花に講演の原稿をつくらせています。「社長の講演の原稿をつくる」仕事は、新入社員にはレベルが高く、自信もない。それは百も承知です。
だから私は、原稿の作成を頼むとき、「でたらめでいい」とつけ加えます。「でたらめ」なら、誰でもできるでしょう。そして、仕上げた原稿に対して、「ノー」とダメ出しをしたことは一度もありません。そもそも私は、社員に「100点」を期待してはいません。実際の講演で、湯澤がつくった原稿をそのまま使うこともありません。
一番大切なのは、仕事のレベルは「そこそこ」でもいいから、社員にやらせてみる、体験させることです。そのために、ハードルをできるだけ下げてあげる。もうひとつ、ハードルを下げると、「プレッシャーが減る」というメリットがあります。気が楽になれば力も発揮しやすくなります。湯澤も優秀社員賞を受賞し、課長に昇進しました。