大規模かつ高い質を誇る、サムスン・メディカル・センターを訪れて、志の大切さを再認識した筆者が、ビジネスにおける「野生の思考」の役割を検証する。

サムスン電子に見る「志」の重要性

東日本大震災直前の3月初旬、サムスン・メディカル・センターを、医療経営研究の仲間たちと訪問・視察した。同センターは、韓国ソウル市に本社をもつエレクトロニクス総合メーカーのサムスン電子が、17年前の1994年に当地ソウルにつくった医療・医学センターである。そこで何より学んだことは、事業には、志がどれほど大事なことか、であった。

サムスン電子は、周知のように、2009年時点で売上高は約140兆ウォン、日本円で10兆円を超える。日立製作所やパナソニックの連結の売上高が10兆円足らずなので、それらをすでにしのぐ存在になっている。

ただ、94年というと、まだ日本メーカーの類似商品を低価格で販売する二流メーカーと見なされていた頃。李健●会長が、「妻と子以外はすべて取り替えろ」と宣言して、同社が抜本的な組織改革に取り組み始めた頃にあたる。※●=臣の右に巳。下にれっか

さて、そうして設立された病院だが、今では、150万平方メートルの敷地に、総計32万平方メートルの床面積の建物が並ぶ。総ベッド数は1306床。それに、「がんセンター」の655床が加わる。

医療従事者数は概数で、医師が1220人、看護師が3230人、医療技術者が730人、そして管理者が410人。毎日の平均外来患者は7600人、院内での1日あたり処置数は210件となっている(Samsung Medical Center 10年より)。