「いじめ撲滅」がいじめを生み出す

「誰にでも優しくしなさい」という言葉はたしかに理想的な言葉かもしれませんが、人との距離感を教えるには妨げになってしまう気がします。子どもが人間関係の壁にぶつかるのは当たり前のことです。この壁にぶつかりながら、さまざまな経験を通して、人との距離感を学んでいくものだと思います。

いじめ撲滅の標語でよく使われている「いじめを絶対に許さない」という言葉について、みなさんはどう思われますか。一見、聞こえのいい言葉に感じるかもしれませんが、私はこの言葉は人に対してとても冷たい言葉のように感じます。

工藤勇一『麹町中校長が教える 子どもが生きる力をつけるために親ができること』(かんき出版)

「いじめは絶対に許さない」ということは、謝っても許されない、反省しても許さないという言葉に聞こえてしまいます。そもそもいじめを起こさないために使われるようになった言葉ではありますが、こう言われる環境で育っている子どもたちからすると、はたして正直に「私、あの子をいじめてしまいました」と言えるでしょうか。

何が人を傷つける言動かということは、大人でも気が付かないことがあります。子どもだったらなおさらです。

言葉で「みんな仲良く」や「いじめを許さない」「いじめをゼロにする」などと言っても、いじめはなくなりません。ましてや、この多様性を排除する言葉がいじめを生み出す原因になったり、いじめを解決できなくする原因になったりするように、私は感じています。

▼まとめ 多様性を認めることが、いじめのない社会への第一歩
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