気持ちと行動を切り離す

普段から使う言葉を少し注意するだけで、子どもに伝わるメッセージは変わります。

たとえば「みんな仲良く」という言葉も「みんな仲良くしなければならない」ではなく、「人と仲良くすることは難しいものだけど、仲良くできたら素敵すてきだね」という言葉なら、子どもたちが受け取るメッセージはまったく違うはずです。

ちなみに、息子が悩んでいたとき、こんなことを付け加えました。「お父さんにも嫌いな人がいるけれど、だからといってその人に意地悪はしないよ。きちんと挨拶もするし、本人に嫌いだと言ったりはしないよ」

心と行動を切り分けることは大事なことだと、きちんと伝えておきたかったのです。

人は、差別をする心は消せないかもしれません。私だって聖人君子ではないですから、誰かを差別しそうな考え方が頭をよぎることもあれば、息子にも伝えたように嫌いな人だっています。

ただ、たとえそんな心は消せなくても、どんな言動が差別になるのかを知ることさえできれば、差別しない行動を取ったり、嫌いな人ともうまく人間関係を築いたりすることはできます。

脳科学の知見から考えてみると、人の「無意識」は同じ行動を繰り返すことによってつくられます。たとえ一度固定化された無意識(それが「心」と言えるでしょう)であっても、別の行動を繰り返すことによって書き換えられることがわかっています。

「みんな仲良く」という理想論を子どもに押し付けて苦しませるよりは、「心と行動は切り分けられる」ということ、そしてだからこそよい行動をするのだということを、伝えたいものです。

▼まとめ 心と行動は切り分けて、「よい行動」をする

嘘も大切なコミュニケーションスキル

子どもたちの周りには、心の教育に関する言葉があふれています。前述した「みんな仲良く」もそうですが、「心をひとつに」「うそをつかない」など、挙げればキリがありません。そして、これらの言葉にとらわれている方が、とても多いと感じています。

子どもが小さいうちはたしかに心の教育も大切ですが、それを言葉で教えるのはなかなか難しいのではないかというのが私の実感です。そしてその言葉の中身についても、少し疑う必要があるのではないかと思うのです。

たとえば「思いやりを持ちなさい」という言葉。

この「思いやり」とは一体なんなのでしょうか。どのような行動のことを言うのか、とても曖昧な言葉です。