「いくつもの会社が『ホワイトソープ』をつくっている」と彼は非難した。「食品店にはホワイトソープがあふれていて、店側も顧客のほうも、特定のものを選ぶ理由がない」。1882年、ハーレーはついにファミリーを説得し、最初の広告キャンペーンに1万1000ドル(現在の価値にして約20万ドル)の予算を確保した。

「石鹸純度99.44%」のインパクト

ハーレーはニューヨークの独立コンサルタントと組んで、同社製品の純度を科学的に訴えようとした。石けんの品質に関しては定まった定義がなかったが、コンサルタントは資料を調べて、石けんは脂肪酸とアルカリだけで構成されるべきであり、それ以外は「異質で不要な成分」であることを見出した。

このコンサルタントは、P&Gのホワイトソープは他の大手3社の製品と比べると不純物が最も少なく、わずか0.56%であることも示した。その構成は、遊離アルカリが0.11%、炭酸塩が0.28%、鉱物質が0.17%だった。天性のマーケティングの才能を備えていたハーレーは、全体からその不純物の割合を差し引いて、キャッチコピーを編み出した。

それは、「石鹸純度99.44%」というものだった。1882年12月21日に掲載された広告には、「洗濯石けんのアイボリーは、化粧石けん〔顔や体を洗うための石けん〕と同じ高い品質をすべて備えており、純度99.44%です」と書かれていた〔「ホワイトソープ」は「アイボリー」に改名された〕。

宗教雑誌の「インデペンデント」に掲載された広告では、デリケートな女性の手が大きな石けんをくぼみのところで持ち、それを簡単に2つに割ろうとする様子を描写していた。その広告は親しみやすいキャッチフレーズ「水に浮きます!(It floats!)」で締めくくられていた〔石けんが水に浮くと洗濯などの際に見失いにくい〕。

広告費は2年で3倍、米最大級の広告主に

ハーレーのマーケティング活動は、最高のタイミングで行われた。1840年代と1850年代を通じて、新たな印刷方式である多色石版印刷が急速に広まったのだ。これは、水と油は混ざらないという原則を基に、アーティストがワックスクレヨンなどの油を使った画材で、石灰岩上に直接絵を描く手法だ。

この新しい印刷方法のおかげで、木版や銅板を彫るという、高価で時間のかかるプロセスが不要になった。その効果は目覚ましく、人目をひく大胆な色の広告を手頃な価格で掲載できるようになった。