“わいせつ教員”も再び教壇に立てる

どうして教員はクビになりにくいのか。背景にあるのは、手続きの煩雑さだ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/paylessimages)

市町村立校の教員は市町村の職員だが、教育の機会均等のため指定都市を除く市町村の教員の給与は都道府県が負担する(県費負担教職員)。

「県費負担教職員の任命権や懲戒権は、県の教育委員会が持っています(地方教育行政の組織及び運営に関する法律)。そのため問題教員を処分するときは、校長が市教育委員会に、さらに市教育委員会が県教育委員会に上げる仕組みになっています。一方、他校への転任はハードルが低く、校長や市の教育委員会の意見が通りやすい。不祥事を早く沈静化させたい校長や市教育委員会としては、懲戒より他校への転任でお茶を濁したいところでしょう」

教育委員会が適正に懲戒処分を下したとしても、安心はできない。懲戒免職=教員免許剥奪ではないからだ。

「懲戒免職で免許は失効します。しかし、失効しても未返納だったり、3年で再申請可能になるため、再び免許を取り、前歴を隠して別の都道府県で再就職する教員もいる」

懲戒免職になった教員のうち、事由がわいせつ行為だった教員は120人(17年度)。これらの教員が再び教壇に立ててしまう状況は、子を持つ親として心配だ。

教員委員会間で失効情報を共有できるよう、文部科学省が「教員免許管理システム」の改修を検討したこともあったが、予算不足で断念。抜け穴は開いたままだ。問題教師を、お咎めなしのまま教壇に立たせぬ施策が必要だ。

(コメンテーター=阿久津総合法律事務所 弁護士 阿久津正志 図版作成=大橋昭一)
【関連記事】
消化できなかった「有給休暇」はいつまで残るか
入試すらない「N高」から慶大生が8人も出たワケ
公務員の給与増は結局ダメ職員を増やすだけだ
不登校児を東大に合格させた親のスゴい声かけ