「フォールス・ネガティブ」対処法

賢明な組織は昔から、イノベーションにおけるフォールス・ポジティブ(実験では成功と出ても、実際は失敗するという現象)を最小限に抑えることには注意を払ってきた。しかし、フォールス・ネガティブにはほとんど関心を向けてこなかった。これはフォールス・ポジティブによるダメージのほうがはるかに見分けやすく、数量化しやすいからだ。フォールス・ネガティブは見分けにくいだけでなく、それに対処する最良の方法論があるわけでもない。それでも企業は、次のような方法で、フォールス・ネガティブを見抜き、うまく対処することができるだろう。

まず、破棄されたすべてのプロジェクトを、その終了から6カ月ないし12カ月後に見直してみることだ。それらを再考するに値するような環境などの変化が起きていないかを見極めよう。

また、プロジェクトが社内で行き詰まっている場合、社外の誰かがそれを前進させるアイデアを考えつくかもしれない。

IBMの研究部門で検討されていたが、ものになりそうになかったあるソフトウエア・プロジェクトの救済に、社外の人間が貢献した例がある。プロジェクトがいったん中止されたとき、IBMは、開発中のソフトウエアを、社外の人間が無料でダウンロードして試用できるウェブサイト、アルファワークスで公表することにした。その後、このソフトウエアは、ほかのソフトの10倍のペースでダウンロードされていることが判明。この結果に促され、IBMは社内でこのソフトウエア・コードを再検討した。今日それはXML(Extensible Markup Language)パーサ(構文解析プログラム)として広く知られている。

また、社内で使われていない技術のライセンスを他社に供与し、売り上げをあげる方法もある。プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)は、「コネクト・アンド・ディベロップ」戦略の一環としてこの方法を使っている。P&Gでは特許取得の日から3年間、社内で使用されなかった技術は、競合を含む他社にライセンス供与してよいという方針を採っている。

これには副次的な利点がある。事業部門が、未使用の技術は競争相手に奪われる可能性があると認識しているため、新技術の利用方法について、以前より入念に検討せざるをえなくなったのだ。