JALの反撃はこれからだ
ANAの急速な路線展開でのシェア拡大にJALも手をこまねいているわけでは無い。経営破綻後、8.10ペーパーで政府の監視下に置かれていた時期は2016年度末までであり、攻めに転じ始めたばかりだ。この時期と前後して開設したのは、ビジネス路線として成田―バンコク線、羽田―ロンドン線であり、開いた差を縮めようとしている。
特にロンドン線は、従来にない深夜出発便としたことで、現地到着は朝となり、同じワンワールドアライアンスであるBritish Airwaysの乗継便を多く選択できるようになった。ANAは、先にフランクフルト線とウィーン線で同様の時間帯で飛ばしている。これもスターアライアンスのエアラインであるルフトハンザ・ドイツ航空とオーストリア航空に接続することを想定している。JALはここに来てようやく深夜便1路線を確保できたことになる。
他社との提携関係を強化していることもJALの特徴だ。2017年以降、JALはベトジェットエア、ハワイアン、アエロフロート・ロシア、中国東方、ガルーダ・インドネシア、マレーシアの6社と提携。うちハワイアンとガルーダはANAと提携していたが、それを引きはがして自社に鞍替えさせた。対するANAは同時期で比べるとアリタリア・イタリア、フィリピンの2社(両社コードシェア提携のみを除く)であり、JALの巻き返しが鮮明だ。
史上初、二社同時期同一路線の新規就航へ
同じ土俵に立った両社は、今後の展開では、同一路線に新規就航することも考えられる。羽田空港の発着枠が増えたことにより、2020年夏ダイヤより両社が増便を行う。日系エアラインが獲得した25枠のうちANAに13.5、JALに11.5枠が割り振られた。新規路線開拓では、今までにない同一路線、同一時期開設の計画も浮上した。
2019年7月29日のプレスリリ-スで発表された情報では、両社ともに成田空港―ロシア・ウラジオストク線の開設を告知した。ANAは2019年冬ダイヤ中の3月16日に就航を決めた。JALは2020年夏ダイヤとなる3月29日としていたが、冬ダイヤ中の2月28日へと時期を早めた。JALは日本初就航にこだわった。このように、政府の監視も終わり、過去にはない路線開設が実現した。