本質的な人とのつながりが生まれる

サウナは人との距離を縮め、誰かと仲良くなるのに良い空間であるのだが、経営者という視点で見ても、サウナによって形成される人とのつながりには特別なものがある。

本多直之、松尾大『人生を変えるサウナ術 なぜ、一流の経営者はサウナに行くのか?』(KADOKAWA)

ヤフー株式会社代表取締役社長CEOの川邊健太郎氏も、「裸と裸で付き合うビジネスパートナーというのは、やっぱり少し特別ですね」と今回の取材でコメントしてくれた。

もちろん、グローバル化と多様化を極めるこの時代において、当然、異性のビジネスパートナーもいるし、リラックスするためのサウナをそうした政治的空間として利用したくないという人もいるだろう。

ただ、事実としてサウナには特別な人間関係を築くための空間としての作用があり、ロシアをはじめとする各国では、サウナ外交も盛んに行われてきた。

一緒にサウナに入るということは「丸腰の私はあなたを攻撃しません、あなたも私を攻撃しませんよね」という“和平条約”を結ぶことであり、裸と裸の対等な関係で強い絆をつくることであるのだ。

今の日本に必要な「内省」の空間

サラリーマンの日頃のストレス発散といえば「お酒」や「飲み会」はその代表格だろう。

一昔前のIT企業の経営者は、西麻布の高級クラブで高級シャンパンを開けて盛り上がるようなイケイケのイメージがあった。

しかし最近の、特に30代以下の若手経営者の間では、その様相は全く異なる。誰もそうした派手な飲み方はしていないし、そういうものにあまり価値を感じていないというのだ。

その代わりにどうやってストレスと向き合い、時間を使っているのかというと、やはりサウナである。先述の久志社長は、重要なのはストレスの「発散」ではなく「内省」であると指摘する。

「日本の居酒屋では、会社の会議よりよっぼど活発に発言(愚痴)して盛り上がっているサラリーマンを見かけますけど、アルコールの力を借りたある種の『ストレス発散』ですよね。今この時代に必要なのは、『発散』ではなくて『内省』だと思うんです。疲れてる自分や頑張っている自分とじっくり向き合うこと、認めて癒やしてあげること。だからこそ、より良い仕事のアウトプットへとつなげることができるので」

こうした若い世代の考え方は、少し上の世代からするとかなりストイックにも見える。

しかし「少ないモノで豊かに暮らす」という今の社会のトレンドにおいて、時間とお金をエコに使ってストレスと向き合い、なおかつそれを仕事にも活かすスキルのニーズは、今後ますます高くなっていくだろう。

たまにはぱぁっとやるのも悪くはないが、ストレスから逃げずにじっくり向き合う「内省」の空間としてサウナを活用すれば、仕事のパフォーマンスも飛躍的に向上するかもしれない。

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