高い生活費を稼ぐために、一生懸命働く人は多い。しかし、実業家の本田直之氏は「本当にそこまでの生活費をかける必要があるのか。支出をいかに選択して絞り込めるかが幸せなライフスタイルを作るためには必要だ」という――。

※本稿は、本田直之『パーソナル・トランスフォーメーション コロナでライフスタイルと働き方を変革する』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

本田直之氏
写真=筆者提供

ピンチの時こそ最も大事なベースができる

コロナがやってきて、危機的状況になっている、という人もいるかもしれません。会社や業界がピンチを迎えている、というケースもあるでしょう。

私がバックスグループという会社の常務取締役として、会社を上場に導いた話はすでに何度もしていますが、2001年に上場してすぐに、会社の業績はおかしくなってしまったのでした。

アメリカ同時多発テロ事件が上場一週間前に起こり、そこから景気が一気に後退し、日本中が景気後退の暗いムードに覆われていました。ここから2004年の終わり頃まで、会社は極めて厳しい時期を迎えるのです。

上場時に売上高41億円、営業利益2億円だった会社は、翌年の売り上げが横ばい、販管費をとにかく削って、ようやく利益が出せるような状況になりました。株主に迷惑がかからないように、と役員報酬をかなりカットして、それを投資に回していきました。

この厳しい時期に学んだことは、とても大きな教訓でした。今のコロナのタイミングも同じですが、ピンチのときこそ、最も大事なベースができるということです。筋肉であったり、体力であったり、文化であったり。そしてそれは、ピンチのときに、どんな行動をしたかによって変わってきます。会社でも個人でも。

お金の流出を徹底的に見直した「3つの使い分け」

実際、バックスグループでは、会社の業績が悪くなって、いろんなことが見えてきたわけです。それまでも無駄な経費などは使っていないと思っていましたが、このときに徹底的に経費を見直し、極限まで削っていきました。

何かにお金を使うときには、それが投資なのか、消費なのか、浪費なのかを徹底的に考えました。この3つの使い分けは、後に私の経営の考え方の根幹の1つになっていきます。

ただお金を使わない、というだけでは会社はうまくいかないのです。投資がまさにそうです。投資をしなければ、その先のポテンシャルがなくなってしまう。だから、やらなければいけない。

しかし、今そこにお金を投資してもリターンがない、というものに対しては、とことん削るべきです。単なる消費、もっといえば浪費をやめる。これだけで、会社のお金の使い方はずいぶん変わります。

このとき、幹部のみんなで考えて、経費を徹底的に見直していきました。苦しかったですが、厳しいときにやるべきはこれだと思いました。

その後、だんだん業績が戻ってきたとき、その効果が現れました。会社は、筋肉質になっていて、売り上げが上がれば大きな利益が出る体質に変わっていたのです。厳しいときに真正面から向き合って、課題に対峙していったからこそ、強い会社になれた。もっといえば、ピンチがやってきたからこそ、筋肉質の会社になれたのです。