手数を打たないと、本当に向いているものはわからない

そして、うまくいきそうなことがわかると、そこにパワーをつぎ込んでいった。手数を打ってみないと、やはりわからないのです。自分たちに向いているかどうか、ということも、やってみないとわからない。

こんなのうまくいくのかな、と一見、思えるものも、やってみたら思ったよりも面白いことになりそうだ、というものもあった。

個人での取り組みもそうです。手数をたくさん打ってみないと、何が本当に向いているのかは、わからない。それが現実だと思うのです。

私はずっと本を出したいと思っていて、翻訳書として初めての本『パーソナルブランディング 最強のビジネスツール「自分ブランド」を作り出す』(東洋経済新報社)を出す2年ほど前に、別の出版社の有名編集者とやりとりをする機会がありました。いろいろ話しましたが、私の言いたかったことは伝わらなかった。それで、別の出版社の別の編集者に当たってみた。手数を打ったわけです。

テーブルの上にペンと手帳とノートパソコン
写真=iStock.com/undrey
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そして1冊目が出た後、たまたま雑談で本の読み方の話をしたら、「それは面白いですね」ということになりました。こうして出たのが、『レバレッジ・リーディング 100倍の利益を稼ぎ出すビジネス書「多読」のすすめ』(東洋経済新報社)です。私の中では、本の読み方が本になるなんて、まったく想像もしていなかった。

多くの人が、きっと私のような本の読み方をしていると思っていたのです。ところが、違った。そして、私の本の読み方は支持されて、本は思わぬ大ヒットになったのです。

なぜプロデュースがうまくいくのか

何が評価されるのか、何に向いているのか、などと簡単に決めるべきではない、と改めてこのとき思ったのでした。思ってもみないことが他人に評価されることもあるし、自分では大したことがないと思っていることが他人には驚くべきことだったりもする。

だから、私は本のプロデュースをするときには、これまでに本を出したことのない人ばかり担当しています。ミリオンセラーになった『伝え方が9割』(ダイヤモンド社)の佐々木圭一さんもそう。

彼らは、どんなものが売れるか、本を出したことがないので知らないのです。私はずっと本の仕事をしてきて、この人のコンテンツで売れるのはここだな、というツボがわかる。だから、プロデュースがうまくいくのだと思っています。

その代わり、驚くほど時間をかけて話を聞きます。何十時間も聞く。そこから、売れそうな内容を見つけてきて、切り口を考え、骨子を考え、編集者とマッチングさせる。

この方法はとても有効だと思っています。なぜなら、初めて本を出す人には自分の何が売れるコンテンツなのか、わからないから。書きたいと思っているようなものは、だいたいうまくいかないものです。自慢話になってしまったり、自伝のようになってしまったり。これでは誰の役にも立たない。