ウェブメディア「TABI LABO」を経営する、NEW STANDARD株式会社代表取締役社長の久志尚太郎氏が、サウナでアイデアが生まれるしくみについて語ってくれた。
「サウナに入る前には頭の中にいろんな思考が渦巻いている。『やばい、明日までにやらなきゃいけないんだった』『疲れたなぁ』『今日の上司マジでムカついたなぁ』『あれ、どうやって処理しよう』。サウナに入ってこれらの思考に何が起きるのかというと、重要度が低いものと緊急性が高いものがスッと消える」
「熱くて複雑な思考ができないなかで、重要度が低いものは『くだらないからいいや』となるし、緊急度が高いものは『これはどのみちすぐやらなきゃいけないんだから、サウナから出たらサクッと終わらせよう』となるからだ」
「そして、日頃後回しにされがちな『重要度が高く緊急性が低いもの』、つまり『本当に考えなきゃいけないもの』だけが残り、じっくりと考えやすくなる。頭の中が一旦ゼロにリセットされ、忙しい日常の中で隅に追いやられていた潜在的な思考が『アイデア』や『インスピレーション』として顔を出す」
サウナはひとりで考え事をするのに良い空間ではあるが、久志社長が指摘する通り、確かに熱過ぎてそこまで複雑な思考はできない。同時に考えられるのはせいぜい1~2個の、本当に重要なものだけだ。
そうやって強制的に雑念が取り払われた純度の高い思考が、結果的に「アイデア」として結晶化するのである。
サウナで考え、水風呂で決断する
「決断」もまた、経営者にとって重要なキーワードである。自分のみならず、社員や会社の命運を握るような決断、経営の現場は常にその連続だ。
もちろん誰かに相談することはできるが、最終的に何らかの判断をくだし責任と覚悟を持てるのは経営者本人だけである。言うまでもなくそこには大きなプレッシャーがかかり、迷いが生じることもしばしばで、決断力こそ経営者の最も重要な資質と言っても過言ではないだろう。
さて、サウナ好きの経営者の間には「サウナで考え、水風呂で決断する」という言葉がある。ニコーリフレ会会長・中市忠弘氏による言葉だ。
重要な経営課題についてサウナでじっくり考え抜いた後、おもむろに水風呂に入る。全身へのキーンという冷たい刺激とともに、思考と視界が一気にクリアになる。すると、目に見えない課題の展望も開け「行けるかも!」というやる気と確信とともに「水風呂で決断する」のだ。
ただし、水風呂に入ってみたら「やっぱりこのアイデアはちょっと違うかも……」と思うことも当然あるだろう。そういうときのためにもうひとつの言葉がある。「サウナで考え、水風呂で忘れる」
やるならやる、やめておくならやめておく。そうした「決断」に最適な空間が、サウナの後の水風呂ということなのだ。