このような「言行一致」は、カトリックやキリスト教世界を超えてフランシスコの人気を増大させた。けれども前任者のように法王宮殿に住まず食事も絶対にひとりでとらないと決めたことについて、毒殺のリスクが減るから正解だ、と語る関係者もいる。

キリスト教の根本にある「清貧」を貫いて生きるのはやはり革命的なことであって、いつ粛清されてもおかしくない危険をはらんでいるのかもしれない。2019年には、アメリカのカトリック保守サイト「ライフサイトニュース」で、19人の神学者たちが司教たちに向けてフランシスコ法王の異端を糾弾するよう署名運動を開始した。

「ハウツーもの」と似ても似つかない説教

竹下節子『ローマ法王』(KADOKAWA)

それでもフランシスコの精力的な笑顔と行動は多くの人々を力づける。深刻な顔で「罪を悔い改めよ」とか「地獄に堕ちる」などと叫ぶような「クリスチャン」を忌避する人々でも、フランシスコの裏表のない信仰の秘密を知りたくなる。

フランシスコの説教は、人生を成功させる指針を語る「ハウツーもの」の言説とは似ても似つかない。悟りや、健康意識や、危機管理などのさまざまな戦略の成果ではないからだ。

冷戦後にグローバル化した世界での「成果主義」とは逆の方向にある。信仰というのは自分を磨いたり高めたりパワーアップすることではなくて「自分の外」に出ることだとフランシスコは言い切っている。

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