謙虚な人柄で人々の心をつかむ

この間に新法王はすべての枢機卿を祝福し、みなが祈り、新法王は嘆きの間と呼ばれる更衣室で自分の背負うことになる重荷を前にして一人泣くことになっている。そして3種のサイズのある法王用の白服やら赤い靴を選んで着替えてからバルコニーに出ていくのだ。楽隊が大聖堂の前に進み、スイスの衛兵たちもそれに続く。

フランス人のトラン枢機卿が出てきて名前とフランシスコという新法王名を発表した。これまでローマ法王で一番多く使われた名は23世までいる「ヨハネ」だ。新しい名によって、新法王は国籍などを超越した「ローマ司教」となるのだ。

その人物はイタリア移民の両親を持つアルゼンチン枢機卿のホルヘ・マリオ・ベルゴリオだった。聞きなれない名に広場の人々は一瞬戸惑った。すると、笑みを浮かべた新法王が姿を現し、ローマ市民にローマ司教としてあいさつし、前ローマ司教のためにまず祈りましょうと言い、「私がみなさんを祝福する前に、神が私を祝福してくれるように祈ってください」と言った。

法王に祝福してもらうのを待っている信者たちに、「祈ってください」と頼んだのだ。去る時にも、「おやすみなさい、みなさん、ゆっくり休んでください」と家族のように声をかけた新法王は化学、文学、哲学、神学を修め、スペインやドイツにも留学した碩学せきがくだけれど、その謙虚な人柄は一瞬で人々の心をつかんだ。

バスや地下鉄を利用。自炊もこなす質素な暮らし

中継で「カトリックという巨大組織の頂点に立つローマ法王というよりは、世界中の信者の司祭さんという感じですね」と述べたコメンテーターもいた。コンクラーヴェに入る前の評議会では今後の改革について政治的な議論がかわされたけれど、そこでもこのアルゼンチンのベルゴリオ枢機卿の真摯しんしさが際立っていたという。

信者数でいうと世界のカトリックの半数以上を占める南米大陸出身のはじめての法王の誕生は、カトリックの新しい時代の到来を期待させた。イエズス会士はじめての法王であることも注目された。

イエズス会はその組織力や実行力やネットワークに優れているし、新法王はアルゼンチンの軍事独裁政権に対しても徹底的に抵抗してきた人だ。婚外子の洗礼を拒むアルゼンチンの司祭を批判したという柔軟な人間性も知られている。