何歳ぐらいになると加齢による心身の衰えが目立ってくるのか

何歳ぐらいになると加齢による心身の衰えが目立ってくるのだろうか。この点がはっきりわかる統計データを次に見てみよう。

厚生労働省が行っている国民生活基礎調査は、毎年の簡易調査の他に3年ごとに大規模調査が行われ、この際には毎年の世帯票、所得票に加えて健康票、介護票による調査が実施されている。

健康票では、体の具合の悪いところ(自覚症状)があればどんなところかを聞いており、大規模調査だけに、それぞれの症状について、男女年齢別に細かく集計されている。

年齢別の有訴率の変化

調査票の選択肢には、「熱がある」「眠れない」「肩こり」をはじめ42の症状が掲げられているが、齢を重ねると多くなると考えられる「腰痛」「目のかすみ」「もの忘れする」「耳がきこえない」について、「ここ数日それらの症状に悩んでいる」と回答した者(有訴者と呼ぶ)の割合を年齢別に図表2にあらわした。グラフには最新の2016年データを実線で示し、約10年前の2007年データを点線で示して対比させた。

いずれの症状の有訴者も加齢に伴って増えてくる点では共通であるが、「腰痛」と「目のかすみ」は比較的若い年齢からも増えてくるのに対して、「もの忘れする」と「耳がきこえない」は特に65歳以上になって急増する老人特有の症状であることがわかる。

「腰痛」は40歳代後半になると1割以上の人が悩むようになる国民病ともいうべきものである。進化論的には、人類は、脳の発達にむすびついた「二足歩行」と引き換えに、「腰痛」「内臓下垂」「難産」という三重苦を負ったといわれるが、確かにそうだろうと思わせるデータである。

「腰痛」と「目のかすみ」は老人特有ではないが、それでも60歳代から加齢に伴う上昇カーブの傾斜がきつくなることが図表から見て取れることから老人病的な側面もかなりあることが理解される。