日韓関係の改善努力をアメリカに示したい

安倍首相と文氏の会話は11分間と短かったが、文氏は「私たちが申し上げていることが、解決策の全部ではない。いくつもの選択肢が考えられる。引き続いて話し合いたい」と語り、韓国側の窓口を大統領府の高官とする案も示した。

正式な首脳会談の実現につなげるために文氏の側近に対応させようというのだろう。

韓国は日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の失効が11月23日に迫り、アメリカから協定の維持を何度も求められている。今回、文氏が安倍首相と11分間、言葉を交わした裏には、日韓関係の改善に努めていることをアメリカに示す狙いがある。同盟国アメリカに対するポーズなのである。文氏はかなり困っているのだろう。

アメリカは「GSOMIA」の継続を強く求めている

アメリカは本気だ。真剣だ。北朝鮮がミサイル・核の開発を続けるなか、米国防総省は11月7日、エスパー国防長官が13日から韓国などアジア4カ国を歴訪すると発表した。韓国の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相と会談し、GSOMIAの継続を強く求める方針だ。さらにスティルウェル米国務次官補も11月6日、韓国を訪問し、康京和(カン・ギョンファ)外相ら韓国政府高官に対し、協定の継続を要請した。

日本政府はこのアメリカの動きを見逃してはならない。アメリカの動きをテコに使って韓国政府を説き伏せる必要がある。

11分間の話し合いの中で、安倍首相は文氏にこう伝えたという。

「元徴用工らへの請求権問題は、1965年の日韓請求権・経済協力協定で解決済みで、韓国側が国内問題として解決すべきだ。外交当局間の協議を通じて懸案を解決したい」

これまで日本政府が主張している原則的立場である。正論だ。主張はぶれていない。説得力があり、評価できる。