「やらないこと」を決める
コンセプトが決まったら、そのコンセプトに合わないことは一切やらないという断固たる態度が大切です。
たとえばG1サミットの場合は完全招待制のカンファレンスなので、誰を招くかと同じくらい、誰を招かないかが重要だという認識でアドバイザリーボードという理事会をつくって招待者を厳選していました。
「日本を変えるための知恵を共有する」というコンセプトが幹にあるわけですから、その人が参加することでその目的がかなえられるかという判断を招待候補者一人ひとりに対して行い、全員の賛成によって招待者が決まります。1人でも反対する場合には招かない。そこで妥協をしてしまうと会全体の質が落ちてしまうという危機感をいつも持っていました。
まちの社員食堂も同じです。こちらは「鎌倉で働いている」人限定なので、そうではない人はお断りしています。飲食店なので、売り上げのことを考えると観光客や住人の方にも開放したらいいのかもしれませんが、そもそものコンセプトが「鎌倉で働く人を応援する」ということなので、このラインは譲れません。
どちらの場合もあえて千客万来にはしない。誰を受け入れないかを決めるのは、とても大事だと考えています。
どんな名人にも「丸投げ」にはしない
どんな人に来てほしいかを明確にすることによって、参加者の方にとっても「なぜ自分がここに参加するのか」という理由が明らかになります。
結果として、会のコンセプトに賛同して能動的に動ける人だけが参加することになり、参加者全員の満足度は高くなります。何かしてもらうという感覚ではなくて、参加者自身がその集いをつくっているという自覚が生まれるからです。
普通「招待」というとお客さま扱いですが、G1サミットでは決して安くはない参加費をいただいています。一方で、事務局としても参加者の方々がそれぞれの力を発揮し、知的好奇心を満たせるように全力でサポートします。ただ、最初の頃は求められている役割が自分でもよくわからず、失敗したこともあります。
あるとき、パネルディスカッションの登壇者の方から事前の打ち合わせで「どういうゴールを目指しているのか」と聞かれました。各界のリーダーをお呼びしているので、私ごときが細かく振り付けをするよりも自由にお話いただければ……と思って「おまかせします」と答えました。
するとその登壇者の方がちょっと困惑した様子で「会としてこういうことをやりたいと思って僕たちを呼んだんでしょう? オーディエンスが何を期待しているのか、どういうことを伝えてほしいのかを伝えてくれないと意味のあるセッションにはならないよ」とおっしゃいました。
言われてみればそのとおりです。いくら名人級の大工さんだとしても、「適当に家をつくってください」ではいい家はできませんよね。それ以来、会として期待していることなどをきちんと言語化して伝えるようにしています。