感情が一時的に増幅

樺沢氏によれば、宮崎容疑者は怒りの感情が一時的に増幅され、その勢いであおり運転や暴力を振るった可能性が高いという。

「ただし、アドレナリンは一瞬で分泌され、約6秒でピークの値から下がるといわれています。つまり、カッとなっても10秒だけ深呼吸して時間の経過を待てば、事態を冷静に見つめ直すことができる。彼にはそれができなかったのでしょう」

激昂している人というのは、自らが怒っているという自覚が持てない。それがもっとも問題だという。

「怒りを鎮めるための効果的な対策は、怒りを自分で認識すること。『いま自分は怒っている』と客観視できれば、一時的な感情で極端な行動に走ることはなくなります。例えば、シリコンバレーを中心に今流行っているマインドフルネス(瞑想)は、自らの感情を自覚する行為です。いま自分は楽しい、いま自分は落ち込んでいるなどと自覚できれば、感情をコントロールできます」

また、樺沢氏によると、宮崎容疑者は怒りの感情を抑えられない病を患っている可能性も否定できないという。

「怒りが爆発しやすい、間欠爆発症という病気があります。いくつかの診断基準があるのですが、宮崎容疑者は、あおり運転と怒りのトラブルを繰り返していたことから、その特徴を備えている可能性もあります」

さらに、こうしたアドレナリンジャンキーの場合、日常生活の中でも自動車の運転はトラブルを招く可能性が高いと樺沢氏は指摘する。

「よく、車に乗ると性格が変わる人がいますが、それは車が自分に全能感・万能感をもたらしやすいからです。車はスピードや方向など自分でコントロールできる領域が大きいので、卑屈だったり、自己肯定感が低い人は相手に悪気がなくても、割り込みをされたと思い込みやすい。クルマを体の延長線のように捉えていると、自分が邪魔されたように勘違いしやすいのです」

では、自己肯定感を高めるためにはどのようにすればよいのだろうか。

「人からほめられるだけでなく、自分で自分をほめるのも自己肯定感の向上につながります。いまの自分でいいじゃないか、追い越されてもいいじゃないかと考えることです」

最後に、万が一、自らがあおり運転被害に巻き込まれた場合は、どのように対処すればいいのだろうか。

「何より相手の挑発にのらないこと。感情は伝染します。自分まで怒ってしまうと相手の怒りは増幅してしまう一方なのです。それを避けるために、相手がどれだけ怒っていても、必ずゆっくり話しましょう。ゆっくり話す行為は、副交感神経が優位に働き、深呼吸と同じ効果があります」

売られた喧嘩は買わない。それがアドレナリンジャンキーから自らの命を守る最大の策である。

(写真=AFLO)
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