きっかけは96年のもんじゅでの観測

身近な自然現象である雷。しかし意外なことに、「なぜ雷が起こるのか」はいまだに解明されておらず、地球物理学における重大な未解決問題の1つとされていた。これまではプラズマや絶縁破壊(ガスコンロを点けたときに火花が発生する現象)など、さまざまな現象が雷の発生原因だという仮説が湧いては否定されてきた。

次なる課題は「なぜ雷雲の中で放射線バーストが発生するか」だ。

そんななか、2018年1月、日本の研究チームが雷から発生する“放射線バースト”という現象の観測に世界で初めて成功し、雷発生の謎に迫るのではないか? という期待を世界に抱かせている。その放射線バーストを実際に観測した共同研究グループの東京大学大学院物理学専攻の博士課程3年生、和田有希研究員に聞いた。

「我々は雷から発生する放射線を観測する、GROWTHという実験を行う研究チームで、その歴史は1996年まで遡ります。そもそも雷が放射線を放っていることに科学者は長らく気づいておらず、それを知るきっかけになったのは、福井県の高速炉もんじゅや柏崎刈羽原子力発電所のモニタリングポストで、雷が鳴ったときにアラートが発報したことで、『雷の発生と放射線には関係があるのでは?』と仮説が立ったのです」

つまり、放射線観測による雷の研究はここ30年で生まれた新しい研究ということだ。