ガンマ線が自然現象から観測

地球は50億年前ぐらいにつくられたさまざまな物質の寄せ集めでできているような状態なので、ガンマ線を発する放射性同位体は、地球内部ではつくられていないんです。ですからこれまで、自然界が生成するガンマ線は、地球内部でできた物質からは発生しないと考えられていたんです。しかし、この研究で雷から発生するガンマ線を観測できた。まず、雷よりもガンマ線が自然現象から観測されたことが、物理学者としてはなんとも興味深かったのです」

この雷雲からガンマ線が発生する過程を研究することで、雷が発生する原理を解明できるかもしれないというのが、今回打ち立てられた仮説だ。

「今回観測できたロングバーストとショートバーストの同時観測ですが、まず、雷が発生したときに放射されるガンマ線を“地球ガンマ線フラッシュ(TGF)”と呼びます。人工衛星が最初に観測したガンマ線がこれに該当します。そして、雷によるガンマ線フラッシュが起きた後、光核反応と原子核反応が起こることは、16年、17年の研究で検証することができました。

そしてやはり、ガンマ線から発展して起こる原子核反応というのは、基本的には自然界では起きないと考えられていたんです。ところが、その現象が雷から観測された。雷雲の中で放射線バーストが発生するという原理が解明できれば、雷の発生原理を解明できるかもしれないという仮説を、今回新たに提示できたのです」

だが、雷が発生した後に原子核反応が起こる現象、そして雷によって発生する放射線バーストの観測はこれまでに成功したが、なぜ「雷雲の中でガンマ線が発生するのか?」という現象については、いまだに解明されておらず、研究チームの次なる課題だという。

そして、この雷からガンマ線が発生する原理を解明するための研究は、ガンマ線が飛ぶ方向と同じようにさまざまな方向性から進める必要があると和田研究員は話す。

「まずは、我々が発生する現象を見過ごさないために、検出器を増やしていくことです。これまで観測できていた現象が、どれくらいの頻度で起こるのかを系統的に調べられるくらいまでに、検出器を増やす必要があります。そしてもう1つは難しいのですが、地球ガンマ線フラッシュ自体の解明です。なぜこれが難しいのかと言えば、これまではたまに人工衛星が勝手に観測するくらいで、観測すること自体が困難だったからです。