このように商社の海外インフラ事業は電力が中心だが、新興国の人口急増に伴う水不足に備え、水資源開発も市場が立ち上がり始めている。

「純利益ベースで見ると電力は100億円台に育っているが、水はまだ5億円、10億円のレベル。それでも、インフラ事業で政府とのパイプを太くしておけば、後日、資源開発の案件が発生した際に有利になる。そんな派生的な部分への期待もある」

と、成田氏は説明する。

最近目立つのは日本勢の劣勢だ。昨年、UAEの原発建設プロジェクトでは、大統領自らセールスに動いた韓国勢が勝ち取り、ベトナムの原発建設プロジェクトはロシア企業が受注するなど、日本勢は敗退している。中国企業もアフリカなどで急激にプレゼンスを高めている。こうした状況を受け、日本政府も危機感を持ち始めた。

「他国は大使館がお客さんのところに出向いて自国企業を売り込んでいるのに、日本政府はまったくサポートなし。ところが先日アフリカに行ったときは大使館の対応ががらりと変わって積極的でした。外務省が、ここだと思う国にエース職員を送り込んでいるようです」(柿木氏)

このように商社側は政府支援を期待しているが、実体を伴う支援になるかどうか疑問と成田氏は指摘する。

「確かに経産省主導でアジアのインフラ開発に商社を活用する意向だが、その資金は財務省次第。JBIC(国際協力銀行)は融資までに時間がかかる。こういう支援体制が強化されるだけでも商社の競争力は高まる」

日本勢が活躍できる国家戦略や金融支援などの“インフラ整備”が急務となっている。