体操ができた当初は、「ラジオ体操 第1」しかありませんでした。それだけでは負荷が足りないという人のために、少し負荷を強めた第2、第3が加わりました。事務などデスクワークの職場では第1だけでもじゅうぶんウォーミングアップになります。体をよく使う職種の方は第2までやっておいたほうが、より腰痛や膝痛、ケガの防止になると思います。実際に運送や土木、建築業などでは第2も取り入れているようです。
オリジナル体操を考案されている企業も増えています
ラジオ体操をベースに、職種に合ったオリジナル体操を考案されている企業も増えています。たとえばコカ・コーラ ボトラーズジャパン。ジュースの缶や瓶は重く腰に負担がかかるため、「腰痛予防体操」が作られました。他には、タクシー会社にもあるようです。座りっぱなしということもありますが、ドライバーさんは常に後方座席を振り返るため、左にばかり腰をひねります。
片方ばかりに体を動かすクセがつくと、筋肉バランスが崩れ、姿勢が悪くなり、ひいては腰痛や膝痛の原因になってしまいます。左右同じ動きがある体操で、バランスを整えていらっしゃるのでしょう。このように極端に左右のバランスが違う動きが多い方は、弱っているほうを多めに動かすとバランスが整いやすくなります。
ラジオ体操の歴史を振り返ると、1925年までさかのぼります。アメリカの生命保険会社で行われていた「ラジオ放送による体操」をもとに、当時の逓信省簡易保険局で実施が提唱され、28年に昭和天皇ご即位の記念として制定されました。現在のラジオ体操は、大阪府学務部体育課が協力して制作されたといわれ、生理学、解剖学を基礎とした医療体操であるスウェーデン体操の影響を受けていると考えられます。
さらに、リズム感を重視しながら柔軟性、巧緻性、筋力の補強を目標とするデンマーク体操の要素も取り入れられていると考えられます。老若男女問わず、いつでもどこでも誰でもできる内容になっていますので、正確に動きを真似できなくてもじゅうぶん体を動かす目的を果たせる体操です。
これからますます増える高齢者の医療費削減や認知症予防にもラジオ体操は有効で、99年9月には、国連の国際高齢者年にちなんだ高齢者向け「みんなの体操」が制定されました。町をあげて積極的に体操習慣を促進する自治体も出てきています。公園に約100人が集まり、毎朝「ラジオ体操」をしている所もあります。
健康維持やそれに伴う医療費削減にももちろん役立っていますが、ご近所づきあいを全くしないまま定年を迎えた人の“公園デビュー”の場にもなっており、老後のコミュニティづくりにも一役買っているようです。ただし、「ラジオ体操」はあくまでも体を動かすことを目的とした体操であり、痛くなった腰や膝を治せるものではありません。痛みがある場合は無理をせず、まずは全身を健康な状態に整えてから体操を行ってください。
次ページから実際に行われている企業体操について紹介する。