コミックマーケットの「面白系コスプレ」

実は、「地味ハロウィン」に集う人たちと似た思考の持ち主が、コミケ(コミックマーケット)等のオタクたちの活動領域で、ずっと前から観察されています。コミケとは、マンガ同人誌等を販売する大規模展示即売会のことですが、そのイベントに、マンガのキャラクターの仮装に身を包んだコスプレイヤーたちもまた、自らの仮装を来場者に見てもらおうとして集まることを楽しみ、来場者もまた彼らの仮装を鑑賞したり写真を撮影させてもらったりして楽しみます。そこにいる「面白系コスプレイヤー」たちが、「地味ハロウィン」に集う人たちに酷似しているのです。

毎年ネット上の話題にあがるコスプレイヤーたちの大半は、マンガのヒロインを巧妙に三次元化した美少女たちです。彼女たちは一般人ながら生来的にキラキラとしたタレント性を持っているため、現場ではアイドルのように扱われ、事実、コスプレをきっかけにして芸能人になることさえあるようです。

しかし、現場にお邪魔すると、美少女ではないコスプレイヤーたちが、思い思いの仮装を楽しむ様子も見られます。キラキラしていない代わりに、地味ながら面白く趣向を凝らすという別の付加価値を帯びているため、それら「面白系コスプレ」も、「美少女系コスプレ」と同様、来場者の好評を博しています。彼らは、美少女には圧倒的に太刀打ちできないというリアルさを正しく認識し、それとは差異化した仮装で楽しみ、また、人々を楽しませているのです。

マンガといえば、大人になってまでそれに夢中になる子供じみた読者が「オタク」と呼ばれるような、ネガティブなイメージを帯びたアンダーグラウンドな文化要素と見なすのが一般的です。けれども、そんなマンガに傾倒するオタクたちは、一般人が抱く社会不適合者というイメージとは異なり、むしろ、生来的にキラキラしえないリアルな自分を正しく直視し、それに代わる立ち位置を現実社会の中にうまく見いだしているように思えるのです。

ひるがえって、オタクではなく一般人だと自認する人たちは、どうでしょうか。ハロウィンの夜、今年こそ、仮装パーティーを開いて盛り上がってみようか、と思っているような人たちは、今、オタクたちから、それに、地味ハロウィン参加者たちから、さらには、清掃ボランティアたちから、「それは、本当に、あなたにとってのリアルなのか?」と問われているのです。

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