「違法である」を始まりに、そこを抜け出す道筋を考える

社会問題を教える際、「善悪」を持ち出してしまうと、学生はシラケてしまったり、説教臭く感じてしまったりして、なかなかうまくいかない。そこで「法律論としては完全に違法だが、どうすれば違法ではなくなるか考えよう」という問いかけをすれば、主体的な思考の端緒になりうる。

つまり、「違法である」を始まりに、違法な状態を抜け出す道筋を考えていくと、具体的な社会改善や現実に合わない法の改正などが視野に入ってくる。

撮影=井出 明
展覧会の会場で取材の応じる丸山ゴンザレス氏。

それは確実に世界をよりマシな方向に変えていく

ゴンザレスの才能は、出版界やテレビ業界だけでなく、学術界でも認知されつつある。それは母校の國學院大学から「学術資料センター共同研究員」というポストを与えられていることからも推察される。

今回の展示は非常に啓発的であったが、彼にはぜひ、「現代資本主義社会の構造的問題点」や「都市文明が抱える誤謬ごびゅう」といった観点から、俯瞰的な評論をまとめてほしい。それは多くの学生に学術の魅力を伝えることにもなるだろう。

なお、今回の展示は、全国に巡回する計画があるそうだ。彼が発信する「都市の闇」には、善悪や説教を越えた次元で、貧困や搾取に対する意識を変える作用がある。それは確実に世界をよりマシな方向に変えていく。一見おちゃらけた素材の中に、平和構築の芽が存在していることに気づきたい。

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