日本はどうか。民間企業による宇宙開発で記憶に新しいのは、元ライブドア社長の堀江貴文氏が出資している「インターステラテクノロジズ(IST)」だ。19年5月、観測ロケット「MOMO」3号機の打ち上げ実験を実施し、同ロケットは日本の民間企業が単独開発したロケットで初めて宇宙空間に到達した。この成功の意義について、八亀氏は宇宙ビジネスとしての可能性は十分にあると述べる。

AFLO=写真

可能性が見えた堀江氏出資ロケット

「近年の宇宙ビジネスでは、小型人工衛星の打ち上げ需要が伸びています。小型衛星は大型ロケットでも打ち上げることができますが、大型の主衛星に相乗りする形で打ち上げられるため、打ち上げ費用が高額なうえ、打ち上げるタイミングや衛星を投入する軌道が制約されます。しかし、小型ロケットは費用を抑えられますし、投入する打ち上げタイミングや軌道を選ぶことができる点が有利。その優位性を活かせる小型ロケットの需要が伸びていく中で、ISTが地球低軌道に小型衛星を打ち上げられるようになれば、ビジネス化の可能性は十分にあるでしょう」

一方で、MOMO3号機の打ち上げられた同月、前述のスペースXは小型通信衛星60基を載せた「ファルコン9」をフロリダ州から打ち上げた。この打ち上げは大型衛星の相乗りではなく、小型衛星のみのもの。同社は20年代半ばまでに1万2000基近くの小型通信衛星を打ち上げ、地球上のあらゆる場所で高速ブロードバンド通信ができるようにするための巨大衛星通信網を構築しようとしており、その最初の60基が打ち上げられたのだ。

「小型衛星の打ち上げを大型ロケットで行うか、小型ロケットで行うかは、打ち上げの規模によって変わってきます。同一の軌道に大量に小型衛星を打ち上げる場合には、当然ファルコン9のような大型ロケットのほうが効率的です」(八亀氏)

大型ロケット市場は、日本ではJAXA(宇宙航空研究開発機構)が開発したH2Aロケットや、欧州のESA(欧州宇宙機関)が開発したアリアン5などが知られるが、現在は前述のとおりスペースXの一人勝ち状態である。18年の打ち上げ回数でいえば、H2Aロケットは3回、アリアン5は5回(うち1回は一部失敗)という中、ファルコン9は20回と桁違いだ。その一番の理由は、スペースXがロケットの価格破壊を実現させたからである。

そこでスペースXがなぜ民間企業であるにもかかわらず独走状態を築けたのか、日本のロケットはスペースXに追いつけるのか、日本でも「ニュー・スペース」が活躍するのか、見ていこう。