また、射場の数も不利です。日本で大型ロケットの射場は種子島宇宙センターのみです。一方で、スペースXは米国内の東西にある軍やNASAが保有する3つの射場を利用できますし、さらなる需要に応えるため自社で射場を造っています」

H3はファルコンロケットとは異なり、第一段ロケットの再利用の機能はないが、使い切りでもファルコン9よりも安価で事業化されれば、宇宙ロケットの競争のうえでは有利な立場に立てるというわけだ。ただ、打ち上げ費用以外の競争となると不利な面もあるという。

小型衛星の打ち上げ需要は10年で5倍

大型ロケットの市場規模自体は今後も大きく変動がないと見られるが、冒頭で触れたインターステラテクノロジズ(IST)の「MOMO」ロケットのような小型ロケット市場は今後拡大すると予測されている。米企業スペースワークス・エンタープライジズの調査によれば、1~50キログラムサイズの小型衛星の打ち上げ数について、13年に100基未満であったが、17年には300基を超えた。21年には400基、23年には500基を超える小型衛星が毎年打ち上げられる予測をしている。

MOMO3号機。日本の民間企業が単独開発したロケットで初めて宇宙空間に到達した。(AFLO=写真)

現在、小型ロケットによる打ち上げ輸送サービスを提供しているのは、世界ではアメリカとニュージーランドの企業であるロケットラボのみ。「エレクトロン」という名前のロケットをすでに複数基打ち上げている。エレクトロンはエンジン製造に3Dプリンタを活用している点などが特徴だ。中国でも、小型ロケットの需要を読んで、ワンスペースなど複数社が急速に開発を進めている。

「最近はすごい勢いで小型ロケットのベンチャー企業が立ち上がっています。ただ、事業化できているのはエレクトロンのみ。他社は開発段階で、打ち上げ価格などは未定のものばかりです」(八亀氏)

日本でも小型ロケットへの投資が着実に進んでいる。ISTが拠点とする北海道大樹町に加えて、19年3月には和歌山県串本町にロケットの射場が造られることが決定した。和歌山を拠点とするのは、キヤノン電子、IHIエアロスペース、清水建設、日本政策投資銀行が共同出資して設立した「スペースワン」だ。この小型ロケット打ち上げ射場は21年に運用開始する予定である。