離婚が増えたのは「一人っ子」が増えたから?

結婚の話から始めたので、離婚の話もしておきましょう。実は2003年から16年連続で、中国の離婚率は上がり続けています。婚姻件数のほうは2014年から減り続けているのにです。

2018年のデータでは、婚姻件数が1011万組、離婚件数が380万組ですから、2.5組に1組ちかくは離婚していることになる。日本では3組に1組ですから、それを追い抜いてしまった。

なぜ2003年から離婚が増えたかについては諸説ありますが、よく冗談半分に解説されるのが、「わがままな一人っ子の八〇後が結婚する年齢に達したから」。誰もが「なるほどね!」と膝を打ってしまう説明です。

ただ、実は離婚は七〇後(1970年代生まれ)のほうが多いのです。古い世代は「離婚は悪いことだ」という価値観をもっています。「これから先の長い人生を考えたら、離婚も選択肢のひとつになる」と考えるようになったのが、七〇後からなのです。

ただ、七〇後が離婚する理由は、八〇後ともまた違うように思います。中国では、日本と比べものにならないぐらい、子供の教育を重視します。子供が高校生や大学生になって手がかからなくなった年代が、七〇後なのです。

日本でも「子供も手を離れたし」という言葉はよく聞きます。でも、たいていの場合、奥さんは、旦那さんが退職するまでは辛抱する。だから、熟年離婚が増える。離婚にふみきるきっかけは同じなのに、時期が違うのは、もちろん理由があります。

女性だからといって待遇差別が存在しない

ひとつは、中国には退職金が存在しないこと。退職時にドカンともらうのではなく、退職後も給料をもらい続けるのが一般的なのです。だから、旦那さんの退職金ねらいで定年まで辛抱する意味がない。

もうひとつ、中国では女性も働くのがデフォルトだということがあります。旦那さんの給料に頼らなくてもやっていける。基本的に男性が女性へ慰謝料を支払う習慣がないので、やっぱり辛抱する意味がない。耐えられなくなったら、早めに離婚してしまうほうが賢い、というわけです。

袁 静『中国「草食セレブ」はなぜ日本が好きか』(日本経済新聞出版社)

さきほど鳳凰男がどんな給料をもらっているかを説明しましたが、べつにあれは男性だけの雇用条件ではありません。女性だってBATに入れば、まったく同じ待遇を受けられる。鳳凰女という言葉がないだけです。日本の女性より生活力がある。

実は、この部分も、あまり日本人に理解されていない。歳をとった人のほうが社会的地位は高いと考えるのと同様、女性より男性のほうが社会的地位が高いと考えてしまう。そんなことはありません。女性経営者として、ものすごく稼いでいる人がざらにいます。

ビジネスで日本をおとずれた中国人の女性社長から、こんな言葉を聞いたことがあります。

「日本人って、なぜか私をスルーして、部下の男の子のほうと先に名刺交換しようとするのよお。あれはどうして?」

知らないとはいえ、やはり失礼なことをしている。高い社会的地位につき、大金持ちの女性はたくさんいます。だから、日本に旅行で来たときも、平気で大きな買い物をするのです。

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