テンセントの本社は深圳ですから、不動産はありえないほど高騰している。頭金を会社で出そうが、いまから家を買うのは無理です。そこで、賃貸住宅を借りる社員向けに、毎年20万円ぐらいの補助を出しているそうです。

平均退社年数は驚異の「2.5年」

ジャック・マーは「阿里人アリレン」という言葉をよく使います。アリババ社員としての愛社精神をもってほしいのでしょう。

だから、年末のパーティでは必ず仮装して歌を披露したりして、社員との一体感を作り出そうと懸命になっている。

中国人は会社へのロイヤリティが低い。転職するのが当たり前なのです。ずっと会社にいるような人は、逆に「転職もできない無能なやつ」とネガティブに評価されかねない。

だから、転職率がものすごい。3年も同じ会社にいたら、もっとも古株という感じなのです。平均退社年数がどんどん短くなっており、リンクトインの統計では、八〇後九〇後は平均2.5年しか会社にいません。平均で2.5年ということは、1年や半年で辞めてしまう人がざらにいることを意味しています。

そこでアリババでは、いかに会社に愛着をもってもらい、「私は阿里人だ!」と誇りをもってもらうかに知恵を絞っている。

たとえば、社員が結婚するときは、会社主催でグループ結婚式をやって、ジャック・マーが仲人をつとめる。結婚5年目には4000元(約6万4000円)もするプラチナの指輪をプレゼントするそうです。

病院と提携し、福利厚生も手厚い

社員だけでなく、その家族にもアリババを好きになってもらおうとしており、「カーネーション・プロジェクト」も始めました。社員の健康診断だけでなく、その両親の健康診断にもお金を出すのです。

中国人の最大の悩みは病院。ものすごく高額の医療費を出すか、すさまじい待ち時間に耐えるか、2択をせまられる世界なのです。病気になってさえそうなのですから、大変な思いをしてまで健康診断を受けようとは思わない。

アリババは100都市にある病院と提携しているので、両親はその病院を予約して使える。しかも、診察料を負担してくれる。

ここまでしてもらうと、さすがに愛社精神をもたざるをえないでしょう。統計はないのですが、アリババの退職率は他社より低い可能性があると思います。ジャック・マーは「4倍の給料を出しても、阿里人は引き抜けない」と豪語していますが、あながち誇張ではないのかもしれません。