「中国は、大きな岐路にさしかかっている」

10月1日付の産経新聞の社説(主張)は、大きな1本社説だ。見出しで「中国建国70年 強権の暴走に監視強めよ 経済力と一体の軍拡に警戒を」と大鉈を振るう。さすが、中国が大嫌いな産経社説である。

さらに「このまま中国共産党の独裁下で覇権の確立へと邁進するのか、それとも政治的な自由や人権を重視した別の道を模索するのか。建国70年の節目を迎えた中国は、大きな岐路にさしかかっている」と書き、一党独裁の政権を批判する。

この産経社説でおもしろいのは次のくだりである。

「一党独裁下の70年は、悲惨な事件の連続だった」と指摘した後、大躍進運動や文化大革命での失敗、天安門事件の惨劇、新疆ウイグル自治区の強制収容などの問題を挙げ、「常識では考えられないことがまかり通っている。昔も今も、人権が軽んじられている事実をしっかりと認識しなければならない」と書く。

産経社説にジャーナリズムは存在するのか

一見すると、分かりやすい主張なのだが、産経社説は元来、人権を重視してこなかった。人権を唱える朝日社説や毎日社説のスタンスを否定的に論じてきた。

極端に言えば、弱者の立場に立たずに強者の立場に立ち、時の政権や有力企業を擁護してきた。新聞社経営の衰退とともに、その傾向が年々高まっている気がする。

果たして産経社説にジャーナリズムは存在するのだろうか。そんな産経社説であっても嫌いな中国のこととなると、人権をストレートに訴えるのだから実におもしろい。