【松井】コミックをうまく電子に転換した出版社はいいけど、活字で勝負してきたところは、いろいろ新しいことを考えなきゃいけない。森下さんが言うように、紙の雑誌を作っている編集者を細らせてデジタルを膨らませようとしても、たぶんうまくいかない。
紙の雑誌が厳しい以上、活路はデジタルです
【新谷】紙の雑誌が厳しい以上、活路はデジタルです。とりあえず2つ方法があって、ひとつは広告モデル。ページビューを増やして、それに伴って広告を増やしていく。
もうひとつは課金モデルで、記事や雑誌のコンテンツにお金を払ってもらう。主流は課金のほうになっていくんだけれど、コンテンツを読むだけでお金を払ってくれる人はなかなかいないから、セミナー的な要素なども入れて、会員ビジネスみたいに広げていく必要があります。お金を払っていただく形がきちっと作れるかどうか、まだ試行錯誤の段階ですけど。
【森下】文春オンラインが急激にページビューを伸ばしているのは、19年4月から週刊文春の中に一本化したのが大きいんじゃないですか。
【新谷】独立した部署だったから社内の外注業者みたいになって、連繋がうまくいかなかった。コンテンツを作る人間と拡散させる人間が同じ部署内にいると、温度感が全然違います。月間1億7500万ページビューまでいって広告も伸びているけど、紙の穴を埋めるまでいかないですね。
デジタルシフトの当初は流通革命だったから、読者に届けるルートが変わっただけでした。でもデジタルで読む以上は動画や音声がなければ面白くないから、当然コンテンツそのものも変わってきます。今後はさらにライブに向かうと思うんです。「いまから当事者を直撃します」と、ライブ配信で見せられるところまで持っていけるかどうか。
【森下】そこのパッケージをうまく考えられる媒体は生き残っていくでしょうけど、体力的に難しいところも出てくる可能性はありますね。
【新谷】だから、大きな事件があったら真相は文春で知りたいという存在で居続けることが大切です。主戦場がデジタルに移ったとしても、読者から信頼していただけるブランドであるために、知恵を絞るしかない。
【森下】週刊朝日は週刊文春さんのように人数も人材もいないので、スクープ連発は不可能です。
私がAERA dot.を伸ばした理由があるとしたら、週刊朝日に載らなかったけど、独自のネタのニュース記事などを土日祝日問わず、タイムリーに配信したこと、朝日新聞出版「大学ランキング」や「いい病院」シリーズなどブランド力のあるデータ記事をネットで活用したことですね。
【新谷】強みを伸ばすことですよ、いまの時代に必要なのは。
【森下】もちろん、雑誌の使命はスクープだと思うんですけど。