取材現場で一緒にやった人を書き残す

【松井】森下さんが諦めるのはまだ早いよ。編集長なんて何年もやらせてもらえるわけじゃないんだから、やりたいことをやりたいようにやればいい。部数が減っていく恐怖は私にもよくわかるけど、「あれをやっとけばよかった」と後悔するのが一番よくない。

【新谷】松井さんは編集長や社長時代、講演したり取材を受けたりするのが好きなほうじゃない印象だったのに、なぜ『異端者たちが時代をつくる』を出したのですか。

【松井】自分でも、回想録は絶対に出さないと言っていた。でも自慢話じゃなくて、取材現場で一緒にやっていた人たちのことを書き残そうと思ったんです。さっきの羽柴弁護士は、22年間ほぼ無償で、あんなに辛い仕事をやってきた。

それから、がんの常識と闘ってきた医師の近藤誠さんや、統一教会と戦った作家の飯干晃一さん。森下さんをはじめとする現場の記者たち。こういう人たちがいるんですよということを、書き残しておきたくなった。

【新谷】私も現役の編集長のとき『「週刊文春」編集長の仕事術』という本を出して、賛否両論ありました。だけど週刊文春の記事の信憑性を伝えるためにもスクープの裏側や、われわれがどんなことを考えながら、どういうプロセスで雑誌を作っているのか、世の中に伝えることに意義があると思ったんです。

【松井】しかし今日は、森下さんからビジネスの話を聞くとは思わなかったな。

【新谷】森下さんは遮眼帯がかかってる競争馬みたいで(笑)、スクープを追うのでもページビューを上げるのでも、あらゆる努力をするのが当然なんです。「エッ?なんでやらないんですか。当たり前じゃないですか」というのが彼女の常識だけど、なかなかできないですよ。私が松井さんから、編集長を3カ月休養させられたとき、森下さんから励ましの電話があって、寿司をごちそうになったんです。「意外に優しいな」って(笑)。

【松井】新谷さんの休養事件と18年のクーデター騒動については、まだノーコメントにしておきます。

【新谷・森下】(苦笑)

(構成=石井謙一郎 撮影=原 貴彦)
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