「坊主丸儲け」は間違い。寺院の43%が年収300万円以下

ここで多くの人はこう思うかもしれない。「坊主丸儲けではないの?」「お坊さんは税金を払わなくてもいいのでしょ」——。

その実、全国に1万の寺を擁する浄土真宗本願寺派では全寺院のうち43%が年収300万円以下である。「坊主丸儲け」レベルが仮に年収2000万円以上とするならば、その割合は6%ほど。また年収1000万~2000万円は13%だ。寺院の格差が広がる傾向にあり、過疎地の村落の寺院では、おおかたが年収300万円以下だ。

撮影=鵜飼 秀徳
無人化した宮城県内の神社

こうした傾向は浄土真宗本願寺派だけではない。全国に1万4600カ寺を擁する日本最大の仏教宗派・曹洞宗でも同様。年間の法人(寺院)収入が300万円以下の寺院は42%、500万円以下は55%だ。

都市と地方での「布施格差」もある。たとえば東京都内に立地する寺院の場合、葬式一式の布施(戒名込み)の相場は、30万円か50万円が多い。これが山陰地方になると3万か5万円。布施相場の格差は10分の1である。地方の寺院では檀家がどんどん減っていく上に、布施の単価も低いのだ。

「税金が免除」も誤解。住職の給料は、所得税が源泉徴収されている

「お坊さんは税金が免除」というのも大きな誤解である。確かに宗教法人の収入には法人税や固定資産税などがかからないが、代表役員の住職に支払われる給料は、所得税が源泉徴収されている。

固定資産税は確かに免除されている。それを「特権」と揶揄やゆする人もいるが、広大な敷地や大きな伽藍に対して固定資産税をかけることになると、都市・地方を問わず、日本のほとんどの宗教法人が消えてなくなるだろう。先述のように寺院収入に対して、課税バランスが極めて不均衡だからだ。

地方都市の困窮寺院では、現在の住職はなんとか生活できたとしても、後継者が現れない。寺の収入がアテにできなければ、地場の企業に就職すればいいじゃないか、という意見もあるが、そもそも過疎地に仕事はない。

しばしばテレビのワイドショー番組などから、「“坊主バーで寺院を再生!”という特集をやるので、コメントが欲しい」などと求められることがあるが、「申し訳ないけれど、そうした動きは気休めにすぎません。寺院再生はそれほど甘いものではないんです」と話している。