常に「なぜ?」と考える癖をつける

思考力というのは、自分の身の回りのことと自分が学んでいる勉強とを結び付けることで鍛えられます。自分が持っている知識や学んだことを、自分の身の回りのことに応用させて、より自分の身の回りのことを理解しやすくする。それが思考力の本質だと考えることができるのです。

日常生活の何げない事柄の中から「問い」を立てて、「なんで高速道路ってこうなっているんだろう?」「どうしてジェンガって難しいんだろう?」と考え、学んでいる事柄と結び付け、解を導くことを「思考する」という。だからこそ東大は日常生活を題材にした問題を受験生に課し、どれくらい普段から思考しているのかを問うのです。

「問い」というのは、「なぜ?」と理由を考えることです。どうしてそうなったのか? なぜそうなっているのか? そういう問いを突き詰めるのが学びであり、「なぜ?」を考えることでより本質的な情報を得ることができる……というわけです。

東大生は、この「問い」を立てるのが非常にうまいです。いつでもどこでも、机に向かっていない時でも、普段から「これってなんでだろう?」「どうしてこうなっているんだろう?」と常に考えているから、机に向かっていなくても自分の頭をよくすることができる。思考力を鍛えるすべを持っているというわけです。

思考力があればムーミンの出身地もわかる

そして、入試問題で思考力を問おうとする姿勢は、何も2020年にいきなり出現するものではありません。2018年、2019年と、現行のセンター試験の問題でも「なぜ?」という思考力を問う問題が出題されました。

昨年出題されたのが以下の問題。「ムーミン」の出身地を問うという問題でした。

「ムーミン」の出身地を問う問題

びっくりするような問題ですね。僕も去年、受験生の教え子から「今年のセンター試験でムーミンが出てたんですよ! 超びっくりしました!」と連絡が来て驚いたのを覚えています。

この問題を解いたその教え子は僕に、「この問題、よくない問題だと思います。ムーミンの出身地なんて、教科書に載ってないじゃないですか」と愚痴っていました。

でも、実はそうではないのです。たしかに教科書には、「ムーミンの出身地はどこか」なんて問題は出題されていません。しかし、「ノルウェーとフィンランドとスウェーデンでは、フィンランドのみ全く異なる言語を持ち、フィンランド語はウラル語に属する」ということはきちんと教科書に書いてあります。この問題は、教科書の知識と、日常にある題材とを結び付ければ答えがわかるという問題なのです。

センター試験は今まで、「教科書に書いてある知識」をそのまま問う問題が主流でした。しかし近年は、「教科書に書いてあること」を、「日常にある普通の物事と結び付ける」という能力がないと答えられない問題が増えているのです。