教育改革の目的は「思考力を付けるため」

さて、現行のセンター試験でも思考力を問う動きが見られるわけですが、将来的な方向性としても、思考力を養成する動きが見られます。

高校のカリキュラムが、2022年には日本史と世界史が一緒になって「歴史総合」という科目が作られ、「地理」が必修科目になることが決定していますが、この変化も両方とも「思考力」に関係していると考えることができるのです。

従来の日本史や世界史といった科目は、歴史上の事実を覚えることに終始していました。「1853年にはペリーが来航した!」ということを暗記しようと、「1853年!」「1853年!」と何度も口に出したり、語呂合わせで「いやゴーサインでペリー来航!」と覚えようと努力することが多かったと思います。

しかしそれは、何も思考せずにただ丸暗記しようと試みていることに他なりません。これでは、短期的には覚えられても長期的にずっと覚えておくのは難しいですし、何より何も楽しくありませんよね。

丸暗記では思考力は身に付かない

大切なのは、「なぜ1853年だったのか?」と考えることです。1853年というのが、世界的に見てどういう年だったのか? 何が起こったからペリーが来航することになったのか? そういうことを考えてみるのです。

実は1853年にはイギリスがロシアと戦争をするクリミア戦争が勃発しています。アメリカは、この混乱に乗じて「イギリスが来ないうちに」と日本に来たのです。また、1848年にはアメリカの開拓が進みサンフランシスコまで到着、1849年にはゴールドラッシュで人が流れ込んでいました。実は1853年という年号にはきちんとした意味があるのです。

そういうことを考えずに、「1853年ペリー来航!」とだけ丸暗記するのって、実はすごく大変なことですし、思考力だって付かないのです。1853年に対して「なぜ?」をぶつけてみるということで、1853年という年号も覚えられますし、もっと本質的に歴史のことを学ぶことができます。

そしてそのためには、より広く世界のことを知る必要があります。1853年の日本の歴史だけではなく、世界の歴史や世界の情勢・経済状況や地政学も知っておかなければアメリカの動向や「なぜ1853年だったのか」ということがわからないわけです。だからこそ、歴史総合が作られ、地理が必修化するのではないでしょうか。