相手の学歴によって賠償額が変わる理由

交通事故の賠償は、物損と人損に分けて検討する必要があります。まずは、人損で後遺症が発生した場合について考えます。

交通事故の被害者が30歳で一家を支える大黒柱と仮定し、深刻な後遺症を負わせ一生車椅子での生活にさせてしまったとしましょう。相手の年収が500万円程度だとしたら、67歳頃まで働いたと仮定した分の逸失利益は約8000万円、慰謝料が約3000万円、合計1億円超の賠償額が相場です。

Getty Images=写真

ここで重要になるのが、被害者の学歴などのスペック。任意交渉段階では、被害者が大企業のエリートなどであれば、年功序列的な年収増加などをできる限り主張し、逸失利益の額などで少しでも有利な結果を得られるよう努力することが必須です。一方、事故時の年齢の年収がその職業における一般的なピークなら、その後の都合の悪い年収減少予測を相手方に伝える必要はありません。

被害者が子どもや学生でまだ働いていない場合、逸失利益が少なくなる傾向にあります。あくまで一般論ですが、幼稚園・小学生なら、逸失利益は約5000万円です。なお、学生であっても、医学部などの場合には、通常の労働者とは違う基礎年収が適用され、逸失利益の金額が跳ね上がる可能性がかなりあります。現実問題、被害者が有名大学・有名高校の在籍者のほうが、加害者に対して交渉しやすいといえるでしょう。

事故の被害者が亡くなってしまった場合

次に事故の被害者が亡くなってしまった場合を考えます。

先ほどと同様に被害者が30歳で年収が500万円程度の一家を支える大黒柱であった場合、慰謝料にそれほどの変化はないのですが、逸失利益については3~4割程度の生活費控除がなされ約5000万円となります。つまり深刻な後遺症が残る場合よりも、死亡事故の賠償額のほうが少ない結果になります。

ちなみに保険実務では、交通事故被害者の多くは将来取得する予定の給料を逸失利益の形で、1度に取得できます。その結果、通常のサラリーマンが月給をもらって生活するよりも有利な運用ができると仮定されるため、その分の運用利益にあたる利息を控除することを中間利息控除といいます。

67歳頃まで働けると仮定したうえで、法定利率の5%運用を前提に中間利息を控除し算出した年齢別の計算結果表があり、それを「ライプニッツ係数表」といいます。