ただ、2020年4月1日以降発生の事故については、低金利を反映した法改正により法定利息が5%から3%になり、それによってライプニッツ係数表も変わります。結果として、逸失利益を中心に賠償額が増える予定です。
たとえば、年収600万円程度で37歳の会社員が交通事故で重い障害を負ったとします。昇給度合いなどを一切考慮せず、今の年収のまま男性が67歳まで働いたとすると、現行のライプニッツ係数を使った式では逸失利益は約9000万円になります。しかし来春以降はライプニッツ係数が増加するため、これが1億円以上になる見込みです。
コンビニに車で突っ込んだら……
最後に物損、営業損害などについて考えます。高齢者が車の誤発進でコンビニに突っ込んだ場合を仮定しましょう。
こういった事故はテレビでもよく報道されていますが、被害者であるコンビニのオーナーの中には「お金の面はともかく、いい休暇が取れてラッキーだった」などと周囲に漏らす方もいます。
コンビニのオーナーは加害者の損害賠償保険によって、店舗が修復するまで休みを取りながらある程度の売り上げを保障してもらえるわけです。その間、バイトを雇う必要もありませんから、経費を圧縮することができます。実際、ちょっと入り口に突っ込まれただけで、ガラスが多少割れ本棚が崩れた程度なら修繕費用は40万~50万円程度であり、保険会社の査定もあまり厳しくありません。店舗の柱にヒビが入ったり、雨漏りなどの被害がない場合であれば、何十万円かの売り上げ保障だけではあったが、深刻な問題ではなかった、といったケースもあるのです。
事実上24時間続けての休みが取りにくいコンビニのオーナーは、対外的な名目が立つ休憩タイムを何より欲していることが多く、「タイム・イズ・マネー」のうち、「タイム」を優先したい気持ちが表に出てしまい、上記のような発言へと繋がります。この休みを利用して、普段はなかなかできない長期旅行をすることもあるようです。
当たり前のことですが、交通事故を起こすとお金がかかります。自賠責の加入だけですと4000万円程度の相手方に対する人損保障のみです。交渉も自分で行わなければならず、高齢の親に中途半端な支払い能力しかなければ、交渉・賠償責任の事実上の負担は子どもらに降りかかる可能性が高いのが現実です。とはいえ、任意保険の基本的なプランに加入していれば、保険会社が相手方と交渉したうえでほとんどの賠償を全額負担してくれます。