同業の中では圧倒的な規模を誇る

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客がサーティワンでアイスを買う場合、まず好きな種類のアイスクリームを選んで店員に伝える。店員は冷蔵ボックスの中のアイスをスクープで丸型にしてくり抜き、コーンやカップの容器に盛り付ける。アイスのサイズは小さいほうから、スモール、レギュラー、キングと3種類あり、2個重ねることもできる。

価格は店舗によって異なるが、参考までに、麻布店(東京・港区)ではスモールサイズ1個で税込み290円(8月3日時点)となっている。ほかにも、複数のアイスを詰め合わせたバラエティパックや、アイスケーキなども扱う。全店平均の客単価は、通常時で700円台前半だ。

苦戦を強いられているサーティワンだが、アイスクリームチェーンの中では圧倒的な規模と存在感を誇っている。「コールド・ストーン・クリーマリー」など同業の競合は存在するが、どれも小粒。サーティワンが圧倒的な規模を誇り、一強の状態だ。同業の競合との競争に敗れたわけではなさそうだ。

アイスクリーム市場は15年で1.5倍以上拡大

では市場の縮小によって苦戦しているのかといえば、それも違う。日本アイスクリーム協会によると、18年度のアイスクリームの市場規模(アイスクリーム類及び氷菓販売金額)は5186億円と7年連続で拡大している。15年前の03年度(3322億円)と比べると1.5倍以上の規模になった。食品市場でこれほど成長している分野は、ほかにはなかなか見当たらない。

「アイスクリーム」と聞くと少子化の影響で打撃を受けているのではないかと思う人がいるかもしれない。しかし「アイスは子どものおやつ」という考えは今は昔。近年は大人やシニアの需要が高まっており、幅広い世代から支持されている。少子化などどこ吹く風だ。

コンビニはアイスの単価を上げ顧客を広げた

アイスクリーム市場がこれほどまでに成長したのは、コンビニエンスストアが果たした役割が大きい。

コンビニは圧倒的な店舗数の多さを背景にアイスクリームの販売を伸ばしてきた。現在、コンビニは大手3社だけで全国に約5万店も展開している。店舗数は右肩上がりで増え続けており、アイスの販売数もそれに比例して高まった。

アイスをこれほどの店舗数で販売する業態はほかにない。もちろんサーティワンが果たしてきた役割は小さくはないだろうが、コンビニとは規模が格段に違う。コンビニは、同じくアイスの最大の販売元であるスーパーとともに市場を大きくけん引してきたのだ。

メーカーの努力も大きい。宇治抹茶を使ったアイスクリームなど大人向けのものや、冬に合ったアイス、シニアでも食べきれるサイズのアイスなど高付加価値商品を開発してきた。子ども以外の消費者を取り込んで裾野を広げることに成功した上に、商品単価も高められたのだ。一部のメーカーでは、コンビニにプライベートブランド(PB)のアイスを供給しているところもあり、二人三脚で市場を開拓しているといっていい。