V6結成前夜

もちろんこのグループ、もともとスケートボードが抜群にできる少年たちの集まりではありません。そう、長野への電話は、その時点でスケートボードができるかどうかを聞いたものではなかったのです。経験がなければ、できないのは当たり前。

質問は「できない?」でしたが、確認したかったのは“今、できるかどうか”ではなく、

“やる気はあるか”ということ。それを確かめるために、「できない」と言っている長野に、二度も確認したのです。

こうして長野はスケートボーイズ入り、という大きなチャンスを逃します。しかし、数年後、もう一度、チャンスはやってくるのです(※4)

「バレーやらない?」

こうして、ワールドカップ・バレーボールのイメージキャラクターとして結成されたのが、V6です。V6のVは、バレーボールのV。その後ワールドカップに合わせて新しいジャニーズのグループが結成されてCDデビューするのが恒例となりましたが、V6はその初代。

当時のジュニアたちも、バレーをすることが、まさかCDデビューにつながるとは思っていなかったのでしょう。しかしこのときは、長野はきちんと手を挙げ、晴れてデビューを果たします。ちなみにこのV6のメンバー選抜時も、やる気のない人間をメンバーから外したことを、ジャニーは証言しています。

「V6もそうです。『バレーやらない?』と声をかけて手をあげた人。キャリアがあってメンバーに入れたい子に声をかけたら『バレーなんかやってどうするの?』。やる気がない人を無理にひっぱってもしょうがないでしょ。あとで『なんで僕を入れなかった』って。あれだけ確認したのに、『君がそんなことやりたくないって、言ったでしょ』。そういうのが三人いた(※2)

やはりデビューにおいても、ジャニーの選抜基準はやる気。すなわち「できる/できない」ではなく「やるか/やらないか」だったのです。

「頑張るのは当たり前」と怒られた堂本剛

ジャニー喜多川が重視するのは、「やる気と人間性」である。そのことが読み取れるエピソードを紹介します。

堂本剛は、ジャニー喜多川に、怒られたことが一度だけあるといいます。それは、先輩のコンサートにジュニアとして登場し、ステージ上でコメントを求められた時のこと。「元気に頑張ります!」と言う剛。特に珍しくない、多くのアイドルが言うであろう定型的なコメントです。しかしその後、ステージ裏にジャニー喜多川がやってきて、剛を怒ったのです。

「頑張るのは当たり前だよ!」

その時、幼い剛の中に「そうか、頑張るのは当たり前なのか」という印象が強烈に残ったのだといいます。それから、後にも先にも、ジャニー喜多川が剛を怒ったことはありません(※5)

こんなエピソードもあります。97年、KinKi KidsがCDデビュー直前の春のことです。デビュー前とはいえ、その年の夏にデビューすることになる2人の人気はすでに沸騰している時期でした。そんなある日、剛が歌番組の収録を終えた時のこと。汗をびっしょりかいた剛のもとに、スタッフが大勢やってきて、うちわを持って扇ぎます。ジャニー喜多川はそれを「あ、ごめん、剛には手がある。自分でやるから」と止めたのでした。