ならば積極的に手を挙げて発言すればいいじゃないかというのは、ネーティブに囲まれて話をしたことのない人の意見でしょう。授業で英語の非ネーティブが発言すると、「何と言ったの?」と聞き直されることが少なくありません。これが大きなストレスとなり、積極的に発言するマインド(精神)が保てなくなってしまうのです。
怯まず発言するには、英語の発音を自信の持てるレベルまで引き上げないといけません。そこで、私は毎週土曜日にトレーナーをつけて、翌週の授業で話す内容の発音をチェックしてもらっていました。同じ時間を使うなら、本をすべて読むより発音の向上に費やしたほうが、ずっと成績につながりました。
ただ、効率化にもいつかは限界が訪れます。ビジネススクールの授業はケーススタディが中心で、1つのケースを予習するのに、どうやっても2時間かかりました。一方、1日3つは課題を片付ける必要があり、予習は1日6時間。寝られるのは4~5時間で、さすがにそれ以上は睡眠時間を削ることもできませんでした。
効率化も勉強量も極限までいったら、残る工夫は体のパフォーマンスを上げること。同じ時間に同じ勉強をするなら、体が疲れておらず脳がよく働くときのほうがいいからです。
スタンフォード時代、私はあまりお酒を飲みませんでした。飲むと睡眠効率が悪くなり、疲れが残ってしまうからです。スタンフォードはパーティーが多く、私もよく参加しましたが、人が何を飲んでいようと気にしないカルチャーがあったおかげもあり、ほぼソフトドリンクでした。
ジムでバイクを漕ぐなど体力づくりにも精を出していました。運動中の時間ももったいないので、バイクを漕ぎながら勉強です。オーディオブックなどの音声教材を聞けば、健康管理もインプットもできて一石二鳥でした。
こうした工夫のおかげで、最初は下のほうだった成績も、2年目にはほぼオールAに近い結果となりました。凡人でも、やり方次第で成績は上げられるのです。
グーグル元CEOに教わったこと
スタンフォードでもっとも印象に残っている授業の1つに、「アントレプレナーシップ&ベンチャーキャピタル」があります。講師を務めるのは、グーグルの元CEOであるエリック・シュミット。実際に起業や経営に携わった実務家が担当する授業が多いのは、まさにスタンフォードらしい。エリックは最初の授業でこう言いました。
「この授業は、起業したい人のためのもの。起業して3年後に100億円で売却を目指すことを目的にするから、合わない人は受けても意味がない」