「文字を追って、音を聴いて、自分でも言う」を繰り返す

【三宅】当時はどのように英語を勉強されましたか?

【山崎】ひたすら音読です。現地の新聞や本の一節をネーティブの方に読み上げてもらって、それをテープレコーダーに録音して、原稿と音とセットになっているものをひたすらシャドーイングしました。文字を追いつつ、音を聴きつつ、自分でも言う。

【三宅】それはすばらしいやり方ですね。私はそれを毎日行っています。

【山崎】英語学習のプロにお墨付きをいただいてうれしいです(笑)。

【三宅】授業で使われる英語は徐々についていけるようになった感じですか?

【山崎】授業の専門用語が中心なので聞き取りは最初からなんとかなったのです。でも日常会話や「1+1=2」を英語でどう言うのかといった基本的なことがわからないのです。それはその都度覚えていくしかなくて。

【三宅】発音はどうでした?

【山崎】まったくダメでした。アイスクリーム屋さんにいってバニラを注文したらバナナを渡されるとか(笑)。

【三宅】私も勘定をしようと思ってビル(bill)と言ったらビール(beer)が出てきたことがあります(笑)。誰でも最初はそういった経験がありますよね。

宇宙飛行士の山崎直子氏(左)とイーオン社長の三宅義和氏(右)
撮影=原 貴彦
宇宙飛行士の山崎直子氏(左)とイーオン社長の三宅義和氏(右)

閉鎖空間で行われたストレスチェック

【三宅】山崎さんはNASDA(現JAXA)に就職されたのち、入社3年目で宇宙飛行士候補者選抜試験に合格されています。860人以上の中から2、3人しか選ばれない大変な試験です。やはりメンタルの強さと頭のよさと体力で勝ち抜かれるものなのですか。

【山崎】受験した側は「あなたは何点だったよ」と教えてくれませんので明確にはわからないのですが、やはり総合的に判断されていると思います。ただ、私も1回試験の書類検査に落ちていますので、一度落ちたらもうダメというわけでもないのです。

【三宅】そうでしたか。いろいろ検査があったと思うのですが、閉鎖環境適応訓練設備での検査、これはどのようなものですか。

【山崎】私が試験を受けたときに新たに導入されたものですね。国際宇宙ステーションに行くと、長い人で半年くらい滞在する人もいて、閉塞感のある空間で共同生活を送るには心理面での適性を考慮しないといけません。検査では宇宙ステーションを模した環境に1週間、閉じ込められます。もちろん外には出られず、窓もなし、携帯電話やテレビもありません。しかも監視カメラがついていて、常に見られている。会話の音もマイクで拾われています。

【三宅】想像するだけでストレスがたまりそうです。

【山崎】それが狙いですから。その環境のなかで司令室から「天の声」がたまに降ってきて「じゃあ、これからワープロを打ちなさい」とか「4人でペアになって、レゴブロックでロボットを作りなさい」などいろいろお題を出されるんです。ディベートも行いました。「インターネットを青少年が使うことに賛成ですか、反対ですか」ということを賛成組と反対組に分かれて議論をさせたり。