日本のラーメン屋にいたインド人女性との出会い

【三宅】英語のお話をしたいのですが、初めて英語を勉強されたのはいつですか?

【山崎】普通に中学生に入ってからですね。

【三宅】英語は得意でしたか?

【山崎】といいますか、英語が好きだったんです。きっかけは、中学校に入る前の春休みだったと思うのですが、近所のラーメン屋さんで食事をしていたんです。するとたまたまインド人の女性がラーメンを食べていて、ついジロジロと見てしまったんです。

【三宅】当時としては外国の方が珍しかったですからね。

イーオン社長の三宅義和氏
撮影=原 貴彦
イーオン社長の三宅義和氏

【山崎】ええ。すると彼女が私に気づいて、席を立って近寄って来たんですね。「あ、怒られるかも」と少し緊張したのですが、そうではなくて、「世界は広いのよ。あなたもがんばってね」と片言の日本語で話しかけてくれたのです。

【三宅】それはびっくりしますね。

【山崎】突然のことで何も返せなかったのですけれども、世界にはいろいろな人がいるということを初めて身近に感じることができました。それを機に意識が世界に向くようになり、中学校に入ってからアメリカに住む女の子と文通を始めたのです。写真を同封したり、ポストカードを送ったりしました。文章は学校の先生に助けてもらいながら書いていました。

【三宅】それはモチベーションアップにもつながりますね。

【山崎】はい。ですから当時は英語を話すことよりも「きちんと書けるようになりたい」と思っていました。いつか留学してみたいと思ったのも中学校時代でしたね。

【三宅】ちなみに今の中高生に参考になるような学習方法というのはありますでしょうか。

【山崎】中学、高校時代は学校の勉強にプラスしてラジオを聴いていました。NHKの基礎講座などをテープに録音して繰り返し聴いたり、少し背伸びしてビートルズの歌の歌詞を調べたり。

【三宅】英語に親しむ最高の方法ですよね。

【山崎】そう思います。今だと英語の教材はたくさんあるのでうらやましい限りです。

初めての海外体験が1年間のアメリカ留学

【三宅】大学は東京大学の工学部航空学科に進まれましたね。

【山崎】はい。チャレンジャー号の事故がきっかけで「宇宙に行きたい」という思いと「宇宙開発に携わりたい」という思いが両方あったので、それなら宇宙工学を学ぶのがいいのかなと単純に考えて行きました。実際には宇宙開発における宇宙工学はごく一部の領域にすぎず、NASAでもJAXAでも、文系を含めたさまざまな分野の専門家が一緒に働いていることをあとで知るのですが。

【三宅】大学院の時にアメリカのメリーランドに1年間留学されていますね。実際にアメリカに行くとなると、いろいろ大変な思いをされたのではないでしょうか。

【山崎】実は海外に行ったこと自体がそのとき初めてで、とにかく勝手がわからなかったのです。たとえば渡米してすぐに部屋の電気とガスの契約をしようと思ったのですが、電話をかけても「わからない」と切られてしまい、結局最初の2日間は真っ暗な部屋でスーツケースの上で寝て、段ボールの上でご飯を食べるような状態で過ごしました。

【三宅】それは不安なスタートですね。

【山崎】本当に「この先どうなるんだろう」ですよ。だから最初のころは大学の事務職員の方にかなり助けていただきながら身の回りを少しずつ整えていって、その後は同じ境遇にある留学生とも少しずつ友達になっていって、なんとか慣れていきました。